内容説明
「自分の過去が、書きのこすに値いするほどのものかといえば、とてもそんなふうには思えない」という含羞の作家・藤沢周平が、初めて綴った貴重な自叙伝。郷里山形、生家と家族、教師と級友、戦中と戦後、そして闘病などが淡々と描かれ、藤沢文学の源泉をあかす稀有なる記録ともなっている。巻末に詳細な年譜も付した、伝記の決定版。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
じいじ
79
大好きな藤沢周平の時代小説、只今読メの本棚は読了60冊でトップの作家です。でも、藤沢さんの幼少時代を過ごした生家は三男三女の大家族、そして彼は学校が嫌いだったなど、プライベートな背景は、ほとんど知りませんでした。この自叙伝「半生の記」を読んで、素顔の藤沢さんを知り、さらに時代小説家の藤沢周平が好きになりました。2023/12/31
優希
53
藤沢さん自身の半生をつづっています。故郷、家族、学校、戦争、闘病などを淡々と描きながら、藤沢文学の原点へと迫っているように思えました。巻末に年譜もあるのが丁寧です。2023/04/25
i-miya
53
2014.02.08(02/08)(再読)藤沢周平著。 02/06 (年譜) ◎S02.12.26生まれ、山形県東田川郡黄金村に父、小菅繁蔵、母、たきゑ(38歳.32歳)次男。 本名、小菅留治。 長姉繁美(11)、次姉このゑ、長兄、久治(7)、あり。 隣家のおばあさんが産婆さんで助かった。 妹、弟生まれる(S05.05) ◎S10(8歳)、担任先生、大久保イチ先生。 通勤バス火災で大久保先生、死亡。 その悲しみ、60半ばの今でもかすかな痕跡。 2014/02/08
ポチ
42
幼少時からの自伝。書かれている文章も優しく暖かく、藤沢周平氏の人となりが表われている様に感じます。結核、幼な子を残して妻との死別…。苦しみ、悲しみが淡々と綴られていることが、一線を越えた人が持つ強さを感じ、胸を打たれました。2016/09/03
ach¡
41
何より留治が戦争に取られなくて良かった!コレに尽きる。ギリギリのところで徴兵を免れた幸運。あと少し生まれるのが早いか終戦が遅れればGOD藤沢周平は誕生しなかったかもしれない。後に教師/結核と三浦の綾ピと似た軌跡をたどる。両者とも苦労の人であり美しい文章を描くところも共通している。作品には著者の人柄が出るが自伝も謙虚一徹。絶望の底は這っても渦中の辛さや苦しさの詳細をひけらかして嘆いたりしない。何も知らぬ人が読めば順風満帆に映るかもしれないが、私には歯を食いしばって耐えがたきを耐えた男の殊勝な背中しか見えない2016/08/25