内容説明
緒戦からの快進撃は一年も続かず、日本は敗北への道を辿りはじめた。東條讃美の洪水は怨嗟の合唱に替り、首相辞任へ。そして敗戦。東條の前には極東軍事裁判での「新たなる戦い」が待ち受けていた……。戦後民主主義の理念を徹底的に貫徹しようという立場から、多くの東條批判者たちに欠落している彼を生みだした歴史的土壌を深く掘り下げることで日本型独裁者の実像を鮮やかに再現し、「彼をつくった時代」「彼がつくった時代」「彼を捨てた時代」が内抱している矛盾を鋭く抉る労作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
こまったまこ
10
上巻だけ読むと東條英機という人は部下思い家族思いで天子様を敬愛する生真面目で几帳面な軍人という印象を受ける。しかしこの下巻を読むと権力を握った途端に峻烈な軍国主義者になっていく。その根本には天子様に誉めて頂きたいという切望がある。私欲はなく国家の為に本気で正しいことをしていると思っている。指導者としては視野の狭さが致命的であるが、戦争は彼一人で始めたものではないし日中戦争から考えると東條英機は著者が言うように最終ランナーであって軍国主義社会をリセットするために悪評を一身に背負わされたのだろう。2015/10/01
樋口佳之
2
近現代において最も権力を独占していたのに、その自覚や行使の方向性が見えていない人だったのでは。2015/09/07
y0my
1
東條英機は独裁者というより、戦前の行き過ぎた精神主義の体現的存在だったんだなと思った。また、太平洋戦争は文明開化からの急成長による歪みを一回リセットするためのものだったのかと感じた。2014/05/08