内容説明
「桔梗座」の奈落は人を喰う。そしてその壁には死んだ役者の、消えた役者の憎悪と悲哀が塗りこめられている──芝居小屋「桔梗座」の市川蘭之助劇団の興行で起こった殺人事件が十五年後、新たな殺人事件を引き起こす。旅芝居の妖気に満ちた世界を怪味たっぷりに描きだし、謎ときの興奮へと誘いこみ、想像を超えた結末へと導く、一九八五年度日本推理作家協会賞受賞の異色長篇ミステリー。ほかに芝居を材に繰り広げられる快作六篇を収める。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
よっちゃん
3
初皆川作品。旅役者・劇団を舞台にしたあまり馴染みのない世界。表題作の裏にある真実意外だった。2017/03/03
あ げ こ
2
観る者すべてを虜にする、役者達の壮絶な美しさ。胸中に秘められた悲哀、愛憎さえ、その身から放たれる甘やかな色香となり、彼等の姿はより艶やかさを増す。夢との境目を失った空間、妖美な幻想の闇を紅く染める血飛沫が、読む者を危うげな陶酔へと誘う。朧げな記憶から生まれた幻想が、悲劇を艶かしく彩る表題作、揺らめく夢幻の闇が呼び寄せる過去、情景の凄絶さがどこか官能的な「瑠璃燈」が特に印象的。2013/12/26
東森久利斗
1
旅から旅への旅芝居一座、座元の芝居小屋存続への苦慮、座長の座員への責任、舞台役者の誇り、舞台の仕掛に舞台用語、旅芝居の裏方として一緒に舞台をつくり、旅をしているような感覚。一部の文化人や粋狂者のあいだで生き残り、残念ながら世間一般からは忘れ去られた旅芝居、まさに舞台裏の内幕。国の重文 「旧金毘羅大芝居(金丸座)」をはじめ、全国に16の芝居小屋が、今も生き残り興行を続けていることに感動。(https://shibaigoya.jp/) 文脈のなかに刻まれた、消えゆく伝統、文化への悔恨、守るべき文化の重み。2025/04/23
梟
1
日本推理作家協会賞受賞作である表題作と他6篇。すべてが旅芝居をテーマに死を描いた短編。今日、歌舞伎に対して高級感と敷居の高さを感じてしまう日本人が多いが、これらの旅芝居には舞台は戦後でありながらも江戸芝居町独特の猥雑で美しい、背徳的な雰囲気が漂う。芝居というものが元々持っている背徳的で頽廃的な美しさを描くのに、皆川博子さんはうってつけの存在。人を引きつける美しい文章で芝居小屋の闇を描き出す。一番気に入ったのは『白衣』。玉三郎丈の鷺娘を知っているせいか、踊りながら苦しみ悶え死んでいく白い影が目に浮かぶよう。2018/11/09
shiaruvy
0
コメントあとから [1987.09.10 初版]
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