内容説明
幸福や善や正義などを私たちの手に取り戻すための考え方入門。古代から現代まで、主要な倫理学説の潮流を紹介し、時代を超える今日的テーマを詳述した20世紀英米倫理学の総決算書。
目次
第1部 古代の哲学者たち(プラトン―人格の健康;アリストテレス―情動の合理性;利己主義と利他主義)
第2部 近代の哲学者たち(ヒューム―共感;カント―人格への尊敬ミル―最大幸福 ほか)
第3部 現代の課題(事実と価値;功利主義とその対抗説;倫理の世界)
著者等紹介
塚崎智[ツカザキサトシ]
1933年生まれ。京都大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学。哲学・倫理学専攻。大阪大学名誉教授
石崎嘉彦[イシザキヨシヒコ]
1948年生まれ。大阪大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学。哲学・倫理学専攻
樫則章[カタギノリアキ]
1956年生まれ。大阪大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学。倫理学専攻。大阪歯科大学助教授
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感想・レビュー
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きひら
1
道徳哲学の通史のなかでは圧倒的におもしろい。全体として「Why be moral?」の問いを基礎に、一貫して通史を眺めるというのがその理由だろう。個人的にヒュームを勉強しているのだが、この本の整理には感激した。『人間本性論』ではなく、『道徳原理研究』をテキストとしているところが特異だが、「共感」に注目して彼の道徳哲学を概観するのがよい。大抵の本は、ヒュームの提起した議論の多さによって、整理がごちゃごちゃする印象があるなかで、この本は1章で、批判的論点まで網羅する。2018/09/04
きひら
0
完読。道徳哲学史についてヘーゲル的なアプローチ(哲学史をテーゼやアンチテーゼの相克として捉え、そこから止揚した学説を提示する)によって読解する。道徳哲学史の叙述・分析としては白眉だと思う。佐藤『メタ倫理学入門』もよかったが、歴史的なものとしては現状これが最良だと思う。永井『倫理とは何か』の講義パートなんかは、これの引き写しのように思える。とはいえ、哲学史の叙述と分析はよいものの(とくに功利主義批判)、著者自身の学説の提示は尻切れの感が否めない。著者の自然主義的な社会倫理学の萌芽はわかるが、不十分。2019/02/20