感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
greenish 🌿
58
花が好きで、江戸じゅう桜でいっぱいにしたい。植木屋に奉公に出た常七の健気で優しい物語 ---1973年初版。常七が奉公を始めた頃からの覚書をもとにしたお話と作者・岩崎京子さんの解説で構成されていて、実際の史実と照らしながら物語が展開していくのが面白い。 植木屋・源吉に見込まれた常七の手。その手は、松の芽を器用に摘み、菊の苗を大切に育て、そして江戸の地にただ黙々と桜の若木を植えていく・・・。春の訪れとともに、あちらこちらで美しい桜を愛でる時、常七の想いも結実したんだと思うと感慨深いものがあります。2014/04/20
katsukatsu
14
7月に亡くなられた岩崎京子さんの代表作。江戸の駒込、植木屋源吉の元で修行する常七を主人公に、菊や桜をはじめ様々な植物を育てる姿とともに、江戸の町と人々の様子が描かれています。作者が古文書を紐解きながら、そこから調べ想像を巡らせることによって、江戸の植木職人たちの生活が鮮やかによみがえり、浮かび上がってきました。その文章の巧みさに、読者もいつの間にか江戸の町に引き込まれます。そして主人公の常七がとてもいい。ひたすら植物に向き合う姿に魅了されました。そこには現代の人々が忘れがちなものが詰まっている気がします。2025/10/18
バニラ風味
10
その秋草の寄せ植えを見て、源吉は驚いた。「こいつぁ、才能がある!」。常七は齢13才。その時から植木屋源吉に奉公し、目を腕を磨き、後に江戸中に、桜の花を咲かせることになる。著者は、常七の何気ないメモを発端に、植木屋での暮らしや出来事を語り、そこから江戸での植物ブームをも知ることができる。桜以前に、菊(本書では描かれていないが、朝顔や万年青などにも)ブームがあり、品評会や番付があった。植物を愛でるだけでなく、それを見世物やネタにする、現在の植物展示イベントは、その時代から現在に続いているんだな、と思った。2014/05/01
つき
7
『ぶんか三 ひのえとらのとし ながつき十七にち、はるる。 うゑげんにほうこう。』 植木職人の源吉に見出されて、植源に奉公するきとになった幼い常七が横帳に書きつけた覚書きを紐解く格好で、虚実入り混じりながら物語が進んでいく。 奉公に上がった常七の生活を覚書きから読み解いているだけなのに、朝の連続ドラマを見ているような感覚で惹き込まれ、とてもおもしろい。 同じ奉公人のさよちゃんの切ない話、奇抜さを求めて菊人形を創り出す親方の話など、黙々と花を咲かせ続けた常七の人生にも、たくさんの出来事があったなあ。2017/02/17
ぽけっとももんが
5
どこまで本当なのかわからないけれども、常七の覚書に沿って物語と著者の解説が進む。 江戸時代の菊作りの騒ぎなど、興味深い。 今日本中に美しい桜が植えられ、春になると心弾むのが常七の「みんなに桜を見せたい」という気持ちから来たものなら楽しいなぁ、と思う。 やっぱり桜のない春は考えられないよね。2014/02/14




