内容説明
国家や政治を、民衆心性の反映、民衆の共同幻想であると捉え、天皇の戦争責任、住井すゑの戦争責任、丸山眞男と全共闘、尾崎豊と吉本隆明。三里塚闘争、秩父事件などを論じる。
目次
1 近代原理と「日本近代」の止揚(政治学の転回と権威主義国家;ファシズムと民主主義と現代―ひとつの「昭和総括」へむけて;「近代国家」原理と反戦平和運動―ひとつの原理的転換を求めて)
2 戦争責任と天皇像(戦争責任と天皇像の落差;生活をつかむ視線―「住井すゑの戦争責任」の問い方)
3 「戦争政治=日本近代」と「排除」の構造(日本近代と戦後民主主義の問題構造―利権誘導型政治と大衆心性;現代日本の「管理」と「排除」の構造―技術合理性と権威主義国家;現代日本の異質性排除と秩序原理―「自己認識」をめぐって)
4 「日本近代」の止揚と共同体再生(現代日本の自我救済と再生の位相―スピードと尾崎豊と吉本隆明;三里塚農民の世界―「土」と「義」の思想;秩父事件研究の問題点―民衆史の水準をめぐって;全共闘世代の「自己否定」的認識―丸山真男の批判にふれて)
著者等紹介
池田元[イケダハジメ]
1945年岡山県に生まれる。1969年早稲田大学政治経済学部政治学科卒業。1980年筑波大学大学院歴史・人類学研究科博士課程修了。現在、筑波大学名誉教授、文学博士。専攻は近代日本政治思想史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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マウンテンゴリラ
2
戦後政治と言えば、ほぼ一貫した自民党による、利益誘導型の金権政治といったイメージがいまだに払拭できない。本書は、そのような金権政治が、大衆の潜在意識下で是認されていたこと、天皇および国民の戦争責任が曖昧にされてきたこと、流行歌の歌詞の変遷にニヒリズムへの後退が見られることなどを総括的に捉えている。それに対して、明確な結論が示されているわけではないが、政治、経済、文化あらゆる面において国の将来を決する重要な判断が求められる時期にあたって、活力や批判精神の低下に対する警鐘を鳴らしたものとも受け取られた。2015/07/02