内容説明
「山月記」や「李陵」で知られる作家、中島敦はどのように作られたのか。『美人作家は二度死ぬ』に続く作家をめぐる小説第二弾!恩賜の煙草をめぐる「天皇と煙草」も収録。
著者等紹介
小谷野敦[コヤノトン]
1962年、茨城県生まれ、埼玉県育ち。本名読みあつし。1987年、東京大学文学部英文学卒。1997年、同大学院比較文学比較文化博士課程修了、学術博士。1990~92年、カナダのブリティッシュ・コロンビア大学に留学。1994年より大阪大学言語文化部講師・助教授、国際日本文化研究センター客員助教授などを経て文筆業。著書『聖母のいない国』(河出文庫、サントリー学藝賞受賞)など多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Ayumi Katayama
17
著者には『このミステリーがひどい!』で初めてお目にかかった。あのときは「面白くない」「つまらない」のオンパレードにいささか辟易としたのだけど、ならば先生のは面白いんでしょうねと、嫌みと興味が相半ばしたような思いでこの本を手に取った。そして……面白かった。ツボにはまったかな? 少し前に太宰治の『女生徒』に元ネタがあると知ったのだが、本書を読んでいるとあれもこれもあの人もこの人もみたいな話で思わずのけぞってしまう。比較文学という分野があるらしい。『女生徒』を元ネタと読み比べた私としては興味をそそられる。2018/12/20
松風
8
タイトルに「どういうこと?」とつられてその疑問解明だけのために読み出しましたが、殺人事件はおきません。しかも、二作目でした。樋口一葉や中島敦について新たに知ることもありましたが、自分は近代文学研究はまぁしないかな、と思いました。恋愛モノとしては『もてない男』の小説版という感じ。もう一作の「天皇の煙草」が面白かった。2014/01/04
かわかみ
5
著者には申し訳ないがミステリーだと勘違いして図書館から借りてきた。2009年は太宰治、大岡昇平、松本清張と中島敦の生誕100年だったそうで、出版業界は賑わったそうだ。その中で中島敦って夭折したからか熱狂的なファンが多いけど寡作だし、海外作品の剽窃みたいだし、そんなに大した作家なのか?という思いから書いた小説だそうだ(論文にはならないのでw)。その主旨よりも作者の分身たる人物とヒロインの甘いロマンスや中島敦ブームを1980年代のニューアカブームに重ねた皮肉が面白かった。けれど、文学者って仙人みたいだな。2024/07/02
kokada_jnet
3
「中島敦殺人事件」は「美人作家は二度死ぬ」に続く、80年代の国文学大学院生・菊池涼子モノ。中島敦の「過剰評価」についての議論は面白いが、涼子に彼氏ができてしまったのは残念。「天皇の煙草」は前半は喫煙者の味わう苦痛をこれ以上ないほどリアルに描き。後半は、主人公の内面をまったく描かず突飛な行動が連続する、中期筒井康隆的な展開。巻末の解題の大久保康雄についての記述も興味深かった。2010/03/07
ほしか
2
あとがきにもありましたが、論文で出しそうな内容を小説にしたもの。2014/07/27