内容説明
英国の田舎に住む紳士ポッターマック氏。彼の生活は執拗なゆすりに耐える日々だった。意を決した彼は、綿密な計画のもとに犯人を殺害する。完璧とも思える隠蔽工作だったが、その捜査に乗り出したのは科学者探偵ソーンダイク博士だった。ソーンダイクはいかにして見破るのか…。倒叙ミステリの創始者フリーマンによる、緊迫感あふれる名品。レディ・モリー、フォーチュン氏、ノヴェンバー・ジョーに続く、“ホームズのライヴァルたち”第四弾。
著者等紹介
フリーマン,オースティン[フリーマン,オースティン][Freeman,R.Austin]
1862~1943、リチャード・オースティン・フリーマン。ロンドン生まれ。1880年にミドルセックス病院付属医科大学に入学し、その後、王立外科医科大学などで働く。デビュー作は、アフリカのガーナに植民地付医師補として赴任した際の探検を本にまとめたTravels and Life in Ashanti and Jaman(1898)。科学者探偵ソーンダイク博士シリーズは、第一作『赤い拇指紋』(1907)をはじめとして、長編21作、短編40作以上を数え、「シャーロック・ホームズのライヴァルたち」の代表格とされている。また、クリフォード・アシュダウン名義の作品もある
鬼頭玲子[キトウレイコ]
藤女子大学文学部英文学科卒業。インターカレッジ札幌在籍中。札幌市在住(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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geshi
27
ミステリに置ける探偵と犯人との頭脳戦の楽しみを抽出した倒叙ミステリの古典。ポッターマック氏の偽装工作を細かく描いて、読者に犯人視点のハラハラを体感させる。事情からすればあまりに可哀想な彼の動機に共感が生まれ、完璧な計画犯ではなく様々な状況から駄目うちをしてしまう弱い人間な事もあり、ついつい肩入れしてしまう。それゆえ、ソーンダイク博士が仮設として犯行を明らかにしていく過程に恐ろしさを感じる、いい追い詰められ方。トリックに時代は感じるが決して古びてはいない質の高さ。2016/03/17
ネコベス
25
ポッターマックは過去の秘密を知られたルーソンに何度も金をゆすりとられていた。ポッターマックはルーソンを殺害して井戸に落とし自宅周辺の足跡に入念に偽装工作を施した。しかし捜査に乗り出したソーンダイク博士は小さな手掛かりから想像力を駆使してポッターマックを追い詰める。1930年に刊行された倒叙ミステリ。自らの偽装工作によりかけがえのないかつての恋人アリスと結婚できないという皮肉な展開。明晰なソーンダイク博士といえども犯人を特定するのが早すぎるとは思うがラストの探偵と犯人の対決シーンと結末は洒落ていて良かった。2019/01/21
本木英朗
16
英国のミスれり作家、オースティン・フリーマンが生み出したソーンダイク博士ものの長編の一つが、この作品である。俺は2008年に一度読んだっきりなので、今回で2回目である。しかしさすがソーンダイクである。推理の一端だけは俺でもできたんだよねえ、今回は。しかも今回は、真犯人のポッターマック氏もよかったしねえ。いやはや、さすがフリーマンであった。また他の作品ももう一度読もうと思う。2019/09/21
内島菫
15
本書の内容が、直前に読んだ『証拠は眠る』でソーンダイクが語った自分も殺人を犯すかもしれないケースそのままだったことに驚く。しかし、本書のように倒叙形式のしかも長篇の場合、犯人にソーンダイクに勝るとはいえないまでも明らかに見劣りしないほどの知性と忍耐力や人間的な魅力がなければ、物語を引っ張っていくほどの原動力にはならないだろう(もちろん本書の犯人はそうした原動力を持っている)。また本書は、私がこれまで読んだソーンダイクものでは珍しく登場人物が語り手とならないタイプであり、2021/08/24
ホームズ
8
犯人が分かっているうえに被害者に同情の余地がないので応援したくなってしまう(笑)ソーンダイク博士にあまり頑張ってほしくない感じでした(笑)後半の作戦については若干微妙な気がしますね。ちょっと無理のあるトリックな気がしてしまいます。とりあえず最後はいい感じで良かったです(笑)2011/02/22