内容説明
「私」が敬愛してやまないレディ・モリー。その凛とした佇まいは、犯罪に手を染めた者すら魅了し、スコットランド・ヤードのエリート達をも凌ぐ行動力と観察眼は、難事件の陰に葬られんとする真実を白日の元にさらけだす。『隅の老人』の著者オルツィが創造した、ミステリ史上初の女性警察官探偵レディ・モリーの活躍を描いた短編集、百年の時を経てついに完訳!“ホームズのライヴァルたち”第一弾。
著者等紹介
オルツィ,バロネス[オルツィ,バロネス][Orczy,Baroness]
1865~1947。本名エンムーシコ・マグダリーナ・ロウザリーア・マリア・ジョーセファ・バルバラ・オルツィ・バーストウ。ハンガリー、タルナ‐エルシュ生まれ。男爵家に生まれるも小作人たちの反乱に遭い、ブリュッセル、パリなどに移住する。その後、ロンドンに移り美術学校に通う。1895年に児童書『The Enchanted Cat』などを上梓。1901年から「隅の老人」シリーズ、1909年から「レディ・モリー」シリーズの連載を開始する。彼女が広く知られるようになった作品は1905年に発表した歴史ロマン『紅はこべ』であり、同書は現在まで世界中で読まれている
鬼頭玲子[キトウレイコ]
藤女子大学文学部英文学科卒業。インターカレッジ札幌在籍中。札幌市在住(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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アキ・ラメーテ@家捨亭半為飯
28
ホームズのライバルたちシリーズのうちの一冊。レディ・モリーと、メアリーのスコットランド・ヤードの婦人捜査課コンビが、ホームズとワトソンとなって数々の事件を解決してゆく。細かく事件の謎を解説するという感じではなく、レディ・モリーの明晰な頭脳と観察力が事件を解決に導いてゆくので、コージー・ミステリを読むような気持ちで、古きよきミステリを楽しめる。2015/04/11
ごへいもち
16
何かが足りない。レディというヒロインなのに貴族の生活というものが見えてこないのは著者自身が貴族だったため形容する必要がなかったからなのか。チョコレートを飲む(毒入りで殺されるw)シーンがあってついベイリーズを飲んでしまった2011/12/12
内島菫
15
現実に先駆け、レディ・モリーが警察で男性顔負けの活躍をする(彼女の探偵譚は1904~09年の設定)というフェミニズムっぽい枠組みは、当然ながら時代の制約内という限定付き。まずレディ・モリーが警察に入る動機が無実の夫を救うためであり、実際夫が釈放されると警察を辞し結婚生活に入る(逆に警察の仕事は身分のある人がやるべきものではないという当時の社会通念もうかがえる)。また、本書の語り手である「私」(メアリー)は、レディ・モリー(貴族)の元メイドであり、彼女らの「友情」もあくまで身分制に則ったうえでのこと。2019/06/15
星落秋風五丈原
11
彼女の愛する夫が結婚式の翌日に身に覚えのない殺人容疑で逮捕されてしまい、終身刑を言い渡される。そこで彼女はその夫の無実を晴らすために警察官となり、夫の無実を証明すべく、警察官としての職務を果たしながら夫が関係した事件を調査。彼女の下で働くメアリー・グレナードによって語られるこの物語は、この時期としては非常に珍しい女性探偵が活躍するシリーズとして、オルツィ男爵夫人のもう一人の探偵の隅の老人とともに歴史に名前を残す。2006/04/10
ホームズ
8
『隅の老人の事件簿』のバロネス・オルツィの女性探偵物の先駆的作品。『隅の老人』のように若干地味かな(笑)婚約者の無実をはらすために警察官として働くレディ・モリー。行動力と観察眼が武器(笑)たまにえげつない罠を仕掛けるけど(笑)2008/08/27