内容説明
近代産業社会の資本と労働の相剋!資本家と労働者の対立はその家族をも巻き込んだ過酷なストライキに突入する。
著者等紹介
小田光雄[オダミツオ]
1951年静岡県生まれ。早稲田大学卒業。出版社の経営に携わる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ケイ
100
素晴らしい社会派小説。骨の成長を妨げるほどの子供の頃からの過酷な労働。地下での仕事の危険さ。貧しさ。無知からくる貞節のなさ。それでも酒場は賑わい、みんながなんとか食べている様子が生き生きと描かれている。ブルジョワ層への不満が募ってくると、ロシア革命の影響下、労働者達が団結する。そして、民衆が蜂起するとどのように狂気を生み出すのか、読み手をどんどんと引き込んでいく。彼らを搾取するブルジョワ層も、悪人とは描かれていない。彼らも言わば一人歩きし始めた資本主義の中に巻き込まれていっている。ずっしりとくる小説だ。2015/07/07
NAO
61
ルーゴン・マッカール叢書13巻は、フランス北部の炭坑を舞台とした社会小説。炭坑夫の劣悪な労働状況とあまりにも乏しい出来高制の賃金。なのに、ストライキに入ったものの、見栄や嫉妬、対抗意識などから彼らは一致団結することが出来ない。本来なすべきことの障害にしかならないのに、自分のことしか考えられない人間の浅ましさは悲しくなるほどだ。ゾラは、炭坑夫たちの苦しみと、彼らの苦しみの上に成り立っているブルジョアたちの太平楽な生活を交互に描くことで、このあまりにもひどい社会構造に対する怒りと疑問をぶちまけている。2017/02/27
白のヒメ
54
フランス北部の炭鉱における労働者の過酷な重労働。けれどその日のパンを買う事もままならない安い賃金に、餓えに苦しむ労働者達が立ち上がりストライキを起こす。そのストライキのいく先は・・・。贅沢を望むわけではなくとも、一日必死に働いてその日の暮らしがままならないというのはどういう生活なのだろう。それが本当に経営側の搾取によるものだったら到底今は許されるものではないけれど、そういう時代があったということなのか。終始「息苦しさ=生き苦しさ」がついてくる過酷な読書。炭鉱が崩落するシーンは肌が泡立つほど圧巻だった。2016/04/20
ケイトKATE
34
読んでいて重苦しい小説だった。炭鉱で働く労働者の過酷な実態と、労働者の苦労など意に返さない資本家の姿は、150年が経ってもゾラの生きていた時代と余り変わらないと思った。労働者と資本家の対立が激化しストライキへと突入し、労働者側は敗北へと進む。その経緯をゾラはリアルに書いている。その筆致は見事だが、読み終わった後は陰鬱な気分になってしまう。2022/09/27
tyfk
12
獣人・テレーズラカン・壊滅・居酒屋・ナナと読んできたけど、新訳だからか、わりと読みやすかったし、劇画ぽい要素が多いかなと。解説ではゾラからの影響でダシール・ハメットが取り上げてある。マルクス、プルードン、ラサールの名前が出てくるけど、バルザックを読んだマルクスをゾラが読んだかは不明。ゾラ(1840-1902)の4年後に生まれたのがニーチェ(1844-1900)。マルクス(1818-1883)の10年後に生まれたのが西郷隆盛(1828-1877)。『坑夫』の夏目漱石(1867-1916)とかだいぶ後。2024/03/17