内容説明
東京の郊外で暮らす、しがないサラリーマン久保田輝之は、ある晩、人を殺めてしまう。自首するべきか?自殺するべきか?いや、しかし、でも…。結局はどちらも選べないまま、逃亡生活を送ることに。はたして、輝之は彷徨の果てに何を見るのか?そして、最後に下した決断とは―。日本全国津々浦々を彷徨い続けること、二年四か月。魂のクライム・ロードノヴェル。
著者等紹介
桜井鈴茂[サクライスズモ]
1968年北海道生まれ。明治学院大学社会学部卒業。同志社大学大学院商学研究科中退。さまざまな職歴を経て、2002年『アレルヤ』(双葉文庫)で第13回朝日新人文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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モルク
100
妻を殺し山中に埋め逃亡した男の580日を描く。1番目のボタンをかけ違ったため、修正がきかず全国縦断の逃避行へ。自首か自殺か逃亡か、その選択さえままならず流される。偶然の出会い、再会、訳ありの人物と登場人物も癖が強いがおもしろい。殺した妻が発見され、その身元が割れ自分が指名手配されていることを知ってからの動揺、思わず感情移入してしまう。2021/01/09
らむり
52
殺人を犯した主人公の、日本全国逃亡劇です。なかなか楽しめました。市橋達也や福田和子事件を思い出しました。2014/09/25
塾長
12
この本の魅力は、殺人を犯した男の逃亡生活の物語のはずなのに、人生とは何か、生きるとは何かが伝わってくるところ。2018/06/28
本虫雪山
10
文庫化にあたり献本拝領。妻を殺し自首も自殺も選べないまま逃げ続けた580日間。刑事は言う。常人ならやってしまったことの重みに耐えかね自首するか自殺する。そうしない人間は常人ではないのだと。しかし本当にそうだろうか?決定的な人生の終わりを引き伸ばしたいと思うのはあまりにも感情移入できる思い。飯場での過酷な労働、逃亡生活の中で行きあった人々。犯罪者も人と関わらずには生きていけない。「やはり死ぬことを考えた。それでも生きることを考えた」最後の慟哭がまっとうでなくて何だろう。常人でも陥るかもしれない選択に震えた。2016/08/30
中野(racoon)
9
★★★★☆ 帯の「殺人を犯して逃亡生活」という設定、そして逃亡潜伏先のひとつに「小倉」があることに惹かれて。ハードな状況とは裏腹に、じんわりくるような暖かい話でした。罪や罰の意識、モラルの高い人は憤るような結末かもしれませんが…自分には現代の冒険記だと感じました。一人旅も野宿も国内に限ってはもはや安全ないま、指名手配というハンデを背負っての逃亡生活だけが「冒険」であり究極の鬼ごっこだよなぁ。始終ワクワクしました。2014/10/13