ちくま学芸文庫
肉体の迷宮

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  • サイズ 文庫判/ページ数 359p/高さ 16cm
  • 商品コード 9784480095480
  • NDC分類 701.5
  • Cコード C0170

出版社内容情報

さまざまな芸術表現を横断しながら、ねじれ、歪み、時には傷つき、さらけ出される身体と格闘した美術作品を論じる異色の肉体表象論。

内容説明

ねじれ、ひきつり、傷つき、腐る肉体。このトポスに派生するあらゆる問題系を鮮やかに論じる。「自然」を特権的な画題としてきたゆえに、希薄な肉体のイメージしか持たなかった日本人が、明治以降、量塊的な肉体表象を持つ西洋美術に対峙した過程を取り上げた「『日本人離れ』の美学」をはじめ、ユイスマンスが魅せられたグリューネヴァルトの磔刑図、フランシス・ベーコンの叫ぶ教皇などの作品を取り上げる。東西の美術・文学・哲学を自在に横断しながら、“肉体”と格闘した美意識を論じる独創的な表象論。

目次

第1章 「日本人離れ」の美学―「他者」としての肉体
第2章 三島由紀夫のバロキスム
第3章 谷崎潤一郎vs三島由紀夫―『金色の死』をめぐって
第4章 人形と彫刻
第5章 寸断された身体―鏡像と画像
第6章 変身と怪物
第7章 ピュグマリオン・コンプレックス
第8章 聖性と腐爛―ユイスマンス小論
第9章 叫びと肉塊―フランシス・ベーコン覚書
第10章 肉体の美術史―芸術の皮膚論講義

著者等紹介

谷川渥[タニガワアツシ]
東京大学大学院博士課程修了。美学専攻。文学博士(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

HANA

47
美術が如何に肉体と関わり合ってきたかを論じた一冊。扱われている内容もトルソーや人形といった美術そのものから、日本美術の肉体の受容や、そこから発生した谷崎潤一郎や三島由紀夫論、ユイスマンスと腐敗といったものまで論じられており実に刺激的。興味深かったのは、ユイスマンスの腐乱がどのような変遷をたどったかを論じた章。何となく読みながら、澁澤龍彦や種村季弘を思い出さされる。美術から始まって、例えば人形一つとってもピグマリオンコンプレックス、ベルメール、シュルレアリスムといった広範な視点が示されているせいかしら。2014/05/06

藤月はな(灯れ松明の火)

27
以前、読んで面白かった「鏡と皮膚」の作者、谷川渥氏の美術評論であり、ハンス・ベルメールの有名な作品が目を引く表紙に惹かれて大学図書館で借りました。今回は美術や文学における「肉体」がテーマ。夏目漱石の渡英での記録とは真逆に日本人離れした風貌であった高木光太郎が自身の風貌を意識して追求した西洋的ともいえる彫刻の肉体性、ベルメールが生身の人間を人形に見立てた写真で分かった関節球体もないが肉薄した人形らしさ、分離された肉体の象徴、変身の意味合い、理想化されるピグマリオン、最近読んだ「さかしま」のユイスマン作品に2013/06/19

三柴ゆよし

14
『鏡と皮膚』がおもしろかったんでこちらも続けて。谷崎vs三島論、ユイスマンス論など、前著より対象が広範にわたっている(多少の重複はご愛敬)。特に高村光太郎、黒田清輝、谷崎潤一郎の三人を並べて語る章がおもしろい。三者三様の美意識のちがいを浮き彫りにするだけでなく、それをヨーロッパと日本の比較芸術論にまで接続していくところにこの人の融通無碍な痛快さがある。欲を言えば個々のトピックにもうすこし分量を割いてほしかったが、本書を入口として、巻末に付された膨大な参考文献リストを渉猟していくのがいいかもしれない。2020/06/29

ラウリスタ~

13
こんなすごい本の存在を今まで知らなかったことが残念。芸術を皮膚に着目して読む。日本人は裸体を見まいとした文化。ギリシャは裸体を誇示する文化。明治期に遊学した彫刻家はそこのギャップに挑む。三島にとっての肉体美とか面白い。ユイスマンスと皮膚についての評が、驚くほどに深い考察。美学畑の人らしく、古代ギリシャの形式-質量の二元論から始まる壮大な仮説を提示する。これは今年一番の掘り出しもの。傑作中の傑作。2013/05/25

ナカユ〜、

3
相変わらずの皮膚感覚を突き通す谷川先生。文学、絵画、文化とを交差させて「芸術の皮膚論」を展開させています。非常に面白いです。確かに画を描くという行為は紙やキャンバス、また彫刻に至ってはあらゆる物質に対峙しますが、このしつこさを強要され征服していく行為(作品を作り上げる事)はまさに肉欲と似た様な感覚を僕は覚えます。ちくまから何冊か出ていますが、谷川氏の入門編としてはわかりやすいものとなっています。2015/06/10

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