内容説明
手と手を取り合って房州館山から江戸に駆け落ちしてきた三次とおとせ。掏摸にあい、公事師に騙され、おとせに代わり妓楼の女主人に買われた三次。料理屋の女将となったおとせは、「おらもあとから逃げる」という三次の言葉を信じて、ひたすら待ち続けた十年の月日。強引に林之助に口説かれたその日、偶然三次に会えたおとせの心はなぜか二人の間で揺れて…。(「恋情の果て」より)。見栄、嫉妬、未練、欲望…静かに熱く葛藤する女たちを描く、珠玉の時代小説短編集。
著者等紹介
北原亞以子[キタハラアイコ]
1938年東京生まれ。石油会社、写真スタジオ勤務後、コピーライターとして広告制作会社に入社。1969年「ママは知らなかったのよ」で新潮新人賞受賞、「粉雪舞う」で小説現代新人賞佳作に入選。その後も、『深川澪通り木戸番小屋』で泉鏡花文学賞、『恋忘れ草』で直木賞、『江戸風狂伝』で女流文学賞、『夜の明けるまで』で吉川英治文学賞を受賞。2013年3月12日逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
じいじ
81
江戸の女たちの狂おしい情熱の恋を描いた12の短篇集。切なさと哀愁漂う話なのに、明日への希望の灯が見える読み心地です。情景描写、人物描写に著者独自の個性を感じます。別れてわかる自身の幼さへの反省と後悔。夫婦の微妙なアヤ、我慢が丁寧に描かれた【寒椿】。房州から駆け落ちしてきた若い二人。バラバラの道へ。10年ぶりに再会する。ひたすら待ち続けた女。妻がいることを触れずに逢う男…【恋情の果て】。叶えられない不倫の恋。健気に待つ女と、出来た女房との葛藤。切ないのに心温まる【朧月夜】の3作が印象的。秀作の恋愛小説です。2016/03/14
文庫フリーク@灯れ松明の火
80
昨年3月逝去された北原亜以子さん短編集。約40年前初出「退屈の虫」から始まり、7年前初出の「朧月夜」まで初出年代順に収録された13編。男女の想い・人の想いの描かれ方が、歳を重ねるごとに深みを増す作品群。表題作、そしてほっとさせる「三年目の菊」最後の「朧月夜」に至っては、おしのの恋情四年を静かに凌駕するおくらの想い。二人が「夫」と想う男の甲斐性の無さよ。【さだまさしさん/まほろば】より 遠い明日しか見えない僕と 足元のぬかるみを気に病む君と 結ぶ手と手の虚ろさに 黙り黙った別れ道 例えば君は待つと→ 2014/12/03
BlueBerry
62
一言で言うと渋い人情物の短編集。切なさ、やるせなさ、意地を張って引き返せない感じとか人のやさしさとかが上手に描かれていたと思います。2014/06/24
カピバラ
31
時代小説×恋愛ものにハズレは少ないなあ。「雁の帰る日」「恋情のはて」がどちらも良かった。2014/12/10
kaoriction
31
時代小説の名手、北原亞以子が遺した十二の短編集。読み終えるのが勿体無くて毎日少しずつ読んだ。贅沢な短編集だ。狂おしく、やるせない思い。見栄、嫉妬、未練、欲望。熱い想いに葛藤する女たち。どの話も決してハッピーエンドではない。ハッピーエンドではないのに、なぜか、どこか、清々しい。その先の人生には希望がある。打算ではなく、次をゆくために見えるひとすじの光。過去を乗り越え、男たちを乗り越えてゆく女たちの、たおやかで、しなやかな生き方。これぞ江戸の恋!「雁の帰る日」「哀怨花火」「恋情の果て」「朧月夜」などが好きだ。2014/06/15




