出版社内容情報
生きていく苦しさから、哀しさから、悦びから逃げられない女と男たちの「罪」と「罰」を描ききる、心震える感動のハードボイルド。
内容説明
ミモザの父・閑に一通の封筒が届いた。白い線で描かれた薔薇の絵のモノクロ写真が一枚入っていて、裏には「四月二十日。零時。王国にて。」とあった。病床の父は写真に激しく動揺し、捨てろと彼に命じる。その姿を見たミモザは春の夜、余命短い父のために指定された明石ビルに向かう。廃墟と化したビルの最上階には三人の男たちが待っていた。男たちは過去を語りはじめる。白墨の王国だったこのビルの哀しく凄まじい物語を―。
著者等紹介
遠田潤子[トオダジュンコ]
1966年大阪府生まれ。関西大学文学部独逸文学科卒。2009年『月桃夜』で第21回日本ファンタジーノベル大賞を受賞しデビュー。12年『アンチェルの蝶』が第15回大藪春彦賞候補になる。14年刊行の『雪の鉄樹』が文庫化された16年に“本の雑誌が選ぶ文庫ベストテン第1位”に選ばれ、一気にブレイク。さらに17年に『冬雷』が「本の雑誌2017年上半期エンターテインメント・ベスト10」第2位、第1回未来屋小説大賞の大賞受賞、推理作家協会賞長編および連作短編集部門候補となり、『オブリヴィオン』が「本の雑誌2017年度ノンジャルのベスト10」第1位となった(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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starbro
261
『オブリヴィオン』に続いて、遠田 潤子、2作目です。運命に翻弄され、壮絶な人生をおくる人々の物語、遠田 潤子ワールドを堪能しました。著者は、女 宮本 輝かも知れません。『白墨』がメインの登場人物の呼び名だとは思いませんでした。ヘンリー・マンシーニの音楽は好きです♪ https://www.youtube.com/watch?v=Ga1dGEsUyME2019/11/06
モルク
158
今は廃墟となった明石ビル。まわりから閉ざされた造りのビル、そこにはかつてだらしないが魅惑的な女明石と見捨てられた子白墨、そして男たちが暮らしており「王国」が存在していた。年月が経ち、1通の手紙により関係者が集められ、それぞれが王国のこと、明石のこと、ある事件のこと、そして白墨について語る。哀しくて凄まじい運命に翻弄された白墨、あの時、男たちはあの子のために正しいことをした…全てはあの子を普通の子にするために。白墨の心の中に空いた穴、それは王国の閉ざされた中庭のよう。遠田さんらしい心に空洞が残る作品だった。2020/05/29
utinopoti27
145
「四月二十日。零時。王国にて。」病床の父あての手紙。狼狽する父が気になる息子・ミモザが向かった廃墟ビルで待っていたのは3人の男たち。彼らが語り出す「王国」で繰り広げられた50年前の物語には、ある少女・白墨にまつわる血塗られた事実があった。奔放な女主人・明石を「共有」する彼らにとっての楽園は、容易に共感できるものではないにしても、「普通であること」に対する切なる希求は、素直に理解できる気がする。自ら堕ちてゆく者たちへのレクイエム。遠田作品にしてはやや淡白な印象の本作にも、確実にそのDNAは受け継がれていた。2019/11/11
のぶ
143
遠野さんらしい作品だった。まわりの環境から人物を造形していく形で、文章に引き込まれていった。主人公、ミモザの父、閑に一通の封筒が届くところから物語は始まる。白い線で描かれた薔薇の絵のモノクロ写真が一枚入っていて、裏には「四月二十日。零時。王国にて。」と書かれていた。それからミモザの数奇な物語が始まる。ミモザは廃墟と化した明石ビルに向かう。そこには3人の男が待っていて、過去を語り始める。今までの遠野作品同様、幸せそうな登場人物はほとんど登場しない。その切なさが心の襞に沁み込んできて印象に残る一冊だった。2019/10/08
nobby
136
「普通がいい」若気の至りで高望み叶わぬ際の捨て台詞や、今でも少なからずそう思っているのは幸せ故の普通があるからだ…その普通を確保するために自分の子を捨ててよかったと安堵し続けるとは悲し過ぎる…「あなたを守る」格好つけや職業柄の励ましで口にしたこともある言葉が心情を傷つけるとは何と寂しい境遇なのか…それでも序章から小出しに示される事柄に予想重ねて作品全体で味わうミステリ感は遠田さんでは意外な作風と感じた。どっぷり落ちずに読了かとホッとしていたら、最後に直面する断じて許せぬ衝撃に愕然とした今はやはり空虚...2021/12/28




