出版社内容情報
日々にそっと加えられる一匹の猫。猫が横切るままならない人間世界。名手が紡ぐ9つの物語
内容説明
アパートに向かう途中の美那は、不審な男女が猫の親子を攫う場面を目にし、残された仔猫を連れて帰ることに。ハッピーと名付けた猫との生活は、荒んだ彼女の心を変えていく。ところがクラブで知り合った男が、ハッピーを引き取りたいという人を見つけ出し…。(自分の猫)ままならない人生と、その背後に見え隠れする猫たちが織りなす物語を繊細に紡いだ短編集。
著者等紹介
井上荒野[イノウエアレノ]
1961年東京生まれ。成蹊大学文学部卒業。’89年「わたしのヌレエフ」で第1回フェミナ賞を受賞。2004年『潤一』で第11回島清恋愛文学賞、’08年『切羽へ』で第139回直木賞、’11年『そこへ行くな』で第6回中央公論文芸賞、’16年『赤へ』で第29回柴田錬三郎賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
aoringo
60
表紙の猫に惹かれて手に取ったけど、猫を愛でる内容ではなく九つの短編それぞれの数だけ人生があり、そのひと時を切り取ったような感じ。猫は幸せでも不幸でもないたまたまそこに存在していた目撃者だった。不思議な余韻が残る作品でした。2019/02/16
shizuka
55
井上荒野さんの本。すっと読めるものとそうでないものがある。こちらは前者。読みはじめたら止まらなかった。9つのお話。猫の登場はまちまち。状況もまちまち。飼い猫だったり野良猫だったり、健康だったり病気だったり。人間て、やっぱり面白い生物だ。なぜこうも物事をややこしくするのか。シンプルになぜ生きられないのか。だからこそ、人生面白いのかもしれないが。さて猫。そんな人間たちを横目でみつつすっと横切っていく。やりたいことに一直線。いきたいところへはいつでもいく。猫がいるから生活に潤いが生まれるね。あー猫になりたいと。2017/06/20
ちょん
26
「人間より長生きする猫はいないのだから」悲しくなる一言(;A;)どの話も心に残る話でした。よく読む優しい面白い猫話とは少し違う雰囲気で楽しめました。2020/11/15
カノコ
21
ままならない人たちの日々に猫が横切る九編を収録した作品集。懐いている猫ばかりではない。同僚の家の猫、姿を見せない猫、木の上にいる猫。ただ生活をする、自分の日々を送る人たちの生活の中に、猫の気配を感じる。掴みどころがない。分かりかけた瞬間に突き放されるような、そんな途方に暮れる感覚がある。彼らはみんな、自分だけの人生を生きていて、それをこちらに分けてくれることはない。猫という共通点を持っているのに、各編を標準化することが難しい、不思議な一冊。旅先で怪我した猫と出会う「ラッキーじゃなかった猫」が印象に残った。2025/01/29
メルル
19
どういうことかわからず、不思議な気持ちでその場に取り残される。今まで以上に続きが気になる。著者の身体を揺さぶりながら問い質したい。猫が当たり前のように日常にいるから、猫の存在感をあまり感じない。でも空気のようにいるから猫無しでは、成立しない。登場人物たちはこの先どんな未来を選択していくのか。独特な世界観にまたやられた。2017/08/30




