内容説明
高名な彫刻家の杉原完三が、自宅兼アトリエから姿を消した。一ヶ月後、完三は武蔵野の林から遺体で発見された。犯人は誰なのか。高校三年生の息子・鉄男の出生の秘密、美貌の母と鉄男の異常な関係など、杉原家の抱える歪んだ家族関係が明らかになり、容疑は息子の鉄男に向けられるが、仰天の顛末とは―。「ギリシャ悲劇」を絡めた連城三紀彦初期の傑作長編ミステリー。
著者等紹介
連城三紀彦[レンジョウミキヒコ]
1948年愛知県生まれ。早稲田大学卒。’78年、「変調二人羽織」で第3回幻影城新人賞を受賞。’81年、「戻り川心中」で第34回日本推理作家協会賞短編部門受賞。’84年、『宵待草夜情』で第5回吉川英治文学新人賞受賞。同年、『恋文』で第91回直木賞を受賞。’96年、『隠れ菊』で第9回柴田錬三郎賞受賞。流麗なる文体と鮮やかなトリックで読者を魅了しつづけ、その独特な作品にはファンも多い。2013年10月19日、逝去。’14年、第18回日本ミステリー文学大賞特別賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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🐾Yoko Omoto🐾
118
歪んだ親子関係、澱んだ愛憎、抗いきれない運命に翻弄される家族を描いた氏の初期作品。表裏一体の愛と憎しみの中にある揺るぎのない執念は、恐ろしだけさが強調されてしまいがちだが、裏切りや傍観に対する憎悪の蓄積というものは程度の差こそあれ許すことの出来ない傷として自分も持ち得るものかもしれないと思わされる。また、自分が運命論者的な考え方に肯定的なせいか、ギリシャ悲劇の「運命から逃れるために選んだ道も自分で気付かぬうちに既に神託通りの道を歩まされている」という一節が作品に大きな説得力と深みを持たせていると感じた。2015/05/01
90ac
44
やはり連城さんの長編は重みがありますね。“エディプス・コンプレックス”も“父親と子”も連城さんの手にかかると見事なトリックの材料になってしまいます。そしてまたしっかり騙されました。精神的に不安定な男の子の心理をうまい具合に操り、自分の思うように計画を進める母親の強かさには参りました。最後の最後までこの母親の言ってることは真実なんだろうか、と思わされます。歪んだ恋愛感情が怖いようで切なくもあります。2017/08/06
papako
38
うーーーん、ちょっと昼ドラっぽくてどろどろねちねちって感じでした。ちょっとキレがないかなぁ。ミスリードがあり、だましてくれますが、ちょっと残念な感じでした。期待しすぎかも。2015/04/02
James Hayashi
23
著者の初期の頃の長編ミステリー。エディプスコンプレックの基となったギリシャ悲劇を取り入れ深みのある作品。中盤で犯人は逮捕されるがストーリーは間断なく続いていく。気軽に読み出したが連城氏の作品は読み応えがあり頭を使う。あまりすっきりしたエンディングではないが、著者ならではの作品。2015/04/24
カノコ
22
彫刻家の完三を殺害した疑いで拘留された息子の鉄男。次第に美貌の母との異様な関係が浮き彫りになる。母と交わり父を殺したギリシャ神話のオイディプスに擬えた、初期長編作品。流麗な文章は長編においても顕在で、親子関係の歪さを刻み込むように訴えかけてくる。掴み所がなく煙に巻かれているような気もするが、それすら心地よい。しかしそれだけではなく、著者らしい技巧に満ちた企みも効いている。わずか230頁弱の間に何度も価値観が反転する騙し絵のような一級品のミステリ。何かの祝福かあるいは予兆のようなエンディングも連城らしい。2024/05/07




