内容説明
深川芸者の鶴次は十年来の情人である女郎屋稼業・十郎の手引きで、ある老人に囲われることになる。その男こそ歌舞伎狂言『東海道四谷怪談』の作者・鶴屋南北だった。最期の焔を燃やすがごとく、恋の艶めきの中で創作に向かう南北。彼の江戸歌舞伎を守ろうと奔走する十郎。その二人に愛された女・鶴次。彼らのひたぶる命を、江戸情緒香る流麗な文体で描く傑作時代小説。
著者等紹介
領家高子[リョウケタカコ]
1956年東京向島生まれ。東京外国語大学ドイツ語学科中退。’95年『夜光盃』でデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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yumiko
48
数々の名作を生み出した四世鶴屋南北には、晩年心通わす女がいた。しかし彼女は以前、南北の息子重兵衛の情人だった…鷹揚で懐深く、老いても艶のある南北がとても魅力的。「人生とは、生まれ落ちた命のひたぶるに遊ぶ時間のこと…」こんな台詞を吐いても、嘘にならないどっしりとした大きさが感じられる。閨の描写も艶っぽく、ほどよくこちらの想像力を掻き立ててくれる。翻弄されるようでいて、自らの心の従うままに進む鶴次も素敵だ。今の感覚で捉えてはいけない、この時代の美しさがある。流麗な文体に魅了されつつ、久々の時代物を楽しんだ。2015/10/26
みっちゃんondrums
15
読み友さんのレビューに惹かれて。深川芸者の鶴次は、歌舞伎狂言作者・四世鶴屋南北晩年の愛人となる。鶴次を南北に差し出したのは、鶴次の十年来の情人・十郎。三人の心模様が江戸情緒を添えてしっとりと描かれる。鶴次の南北への想い「『おっかないお人だ』・・・そのおっかなさに鶴次は惹かれるのだ。あの眼の中に自分を映しこみたい」、南北の鶴次への言葉「遊びだと思いなさい。生きているってのは、何もかも命の遊びなんだ」、心臓を患った十郎の思い「忘れたい。何をか。むなしさを。はかなさを」。恋と生と死の物語に浸った。2016/01/09
山内正
3
口説くかもしれねえよ七十過ぎの爺さんだが 妾に差し出す気かい 辰巳芸者を口説落すのが深川 聞き入れなくても構わない気にしやしないさ あのお人一体何者なんだい 食後の茶を啜るように鶴次を口説いた 古女房が亡くなってね 芸者は辞めても辞めなくてもいい すっかり魅入られてる おっかない人だ 鶴屋南北が去年四谷怪談出しただろう 伊右衛門が当たったんだ あの時の老人が特別な客か直ぐに分った 口説かれたか良かった おっかないわな大き過ぎて気色悪い そのまさかさどうだい?2022/06/02
山内正
0
芸者鶴次は情夫十郎から さる大事な人の面倒を見てくれと たっての願いをされ 仕方なく承知し老人と合う 相手は世にでた戯作者鶴屋南北だった 執筆に行き詰まって南北は 芸者の寄り添う姿に自分を 奮い立たし意欲を出す やがて男と女の中になり初めて 人の助けである事に気づく 老人の最後の生き方を描く2017/10/10




