出版社内容情報
もし地球が一面海に覆われていたら。逆に今の水量が8分の1に減ったら。また、地球の大きさが10分の1なら。生命は誕生できたか?
「もしも、地球にある水の量を今の10分の1に減らしたら何が起こるだろうか」
本書の著者である阿部豊氏は、その妻阿部彩子氏の研究ジャンルで利用される大気循環モデルを、生命の星の条件を探ることに利用することを思いつきます。
大気循環モデルはコンピューターのシミュレーションモデルで、地球の将来の気象条件を探るために開発されたものでした。
2011年に『アストロバイオロジー』誌に連名で発表された論文は、世界中で引用されることになる衝撃的な結論を示していました。
水の量を10分の1に減らしたほうが、生命の星としての地球の寿命はあと30億年伸びるというものだったのです。
本書は、このように、著者の研究テーマである、「地球以外に生命の星はあるのか」について、様々な大胆な仮説から迫っていくものです。
・太陽系でプレートが動くのは地球だけで、それが生命にとって不可欠だった。
・地球はあと10億年たつと、気温が1000℃を越え生命は住めなくなる。
・水は惑星誕生の瞬間にすでに獲得されていた
・海は地球の内部のマントルの水からできたと考えられる。
・地球の大きさの10倍の「スーパーアース」型惑星は、陸地のない水浸しの惑星になる。
等々、直感を裏切る驚愕の発見が次から次へと披露されます。
序章 地球以外のどこかに
私たち以外にもこうして星空を見上げている存在はあるのか、満天の星空の下で、そう考えるところからこの本は始まる。そのことを解明するために、様々な分野を横断した研究が始まっている
第1章 水
なぜ、生命には水が必要だと言えるのだろうか? 土星の衛星タイタンの湖のようにメタンでは駄目なのだろうか? その秘密のひとつには、水は宇宙のなかで、あまりにありふれたものということがある
第2章 地面が動くこと
我々の足元では、大陸を乗せた巨大な石の板「プレート」が動いている。こうしたプレートが動く惑星は太陽系では地球だけだ。なぜ、このことが生命にとって重要なのだろうか? 鍵は二酸化炭素にある
第3章 大陸
陸地がない海だけの惑星を考えてみよう。そこで生命は繁栄するか? 陸地には生命にとって重要ないくつかの働きがある。それは二酸化炭素を貯え、リンを供給することだ。そのメカニズムとは?
第4章 酸素
酸素がないままでも微生物は存在できる。しかし現在のような複雑な進化をとげた生物、知的生命は存在できないだろう。エネルギーを効率よく生み出す酸素の機能とは? 生物の大型化と酸素の関係とは?
第5章 海惑星と陸惑星
地球の海の水の量を10分の1にしたら生命は存在できるだろうか。
直感に反して、そうした「陸惑星」の方が生命が存在する期間は長い。「海惑星」の地球はあと10億年で生命の住めない環境になる
第6章 惑星の巨大衝突
太陽系の惑星は形成の最終段階に、惑星同士の巨大衝突「ジャイアントインパクト」を繰り返していた。衝突の衝撃で地表はすべて荒れ狂うマグマの海と化す。惑星の形成過程を探ってみよう
第7章 大気と水の保持
水は宇宙空間でありふれている物質であるために、惑星は形成期に水を含んで誕生する。では、火星と金星に水がなく、地球にある理由は何か? 太陽からの距離と惑星の大きさが大きく関わっている
第8章 大きさ
太陽系外に巨大な地球型惑星「スーパーアース」の発見が相次いでいる。生命の条件に惑星の大きさは関係するのだろうか。計算すると「ミニ地球」にも「巨大地球」にも思わぬ難点が生じるとわかった
第9章 軌道と自転と他惑星
もしも、太陽系に木星がなかったら、地球はどうなるだろう。地球の300倍の質量を持つ木星はその重力で、太陽系外からの彗星から地球を守る働きをしている。変化する軌道と自転軸の働きとは?
第10章 恒星
太陽の寿命はおよそ100億年。しかし恒星のなかには、わずか1000万年程度の寿命しかないものもある。恒星の大きさは恒星の明るさと寿命を決め、惑星の環境を大きく左右する
結び 「ドレイクの方程式」を超えて
1961年、地球外の生命体の存在について、確率論から迫った科学者がいた。ドレイクの方程式と呼ばれるその考察は、その後の観測技術の発達の中で、どう評価されるべきなのか。そして将来は?
補遺 磁場は生命に必要なのか
解説 「信念」を「科学」に変える 阿部彩子
内容説明
東大の地球惑星科学の最先端の研究を初めて一般向けに書き下ろす!
目次
序章 地球以外のどこかに
第1章 水
第2章 地面が動くこと
第3章 大陸
第4章 酸素
第5章 海惑星と陸惑星
第6章 惑星の巨大衝突
第7章 大気と水の保持
第8章 大きさ
第9章 軌道と自転と他惑星
第10章 恒星
結び 「ドレイクの方程式」を超えて
補遺 磁場は生命に必要なのか
著者等紹介
阿部豊[アベユタカ]
1982年、東京大学理学部地球物理学科卒業。1987年東京大学大学院博士課程修了。現在は東京大学理学系研究科の地球惑星科学専攻で准教授を務める。惑星の形成過程を主な研究対象とし、2011年に、コンピュータによる気候変動の予測モデルを用いて、地球上の水の量を極端に減らすとどうなるかなどの条件を数値実験。妻で気候研究者の阿部彩子との共著論文「陸惑星の生存限界」として『アストロバイオロジー』誌に発表し、世界的な話題となった。2003年にALS(筋委縮性側索硬化症)を発症している
阿部彩子[アベアヤコ]
1987年、東京大学理学部卒業。1993年、スイス連邦工科大学で博士号取得。現職は東京大学大気海洋研究所で准教授を務める。気候システム学、古気候モデリングを専門とする。2012年、自然科学分野の女性科学者に贈られる猿橋賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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