ボラード病

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  • サイズ B6判/ページ数 165p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784163900797
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0093

出版社内容情報

こんな町、他にあるんですか――〈空気〉に支配された海辺の町で少女が見たものは? 安全神話からの覚醒を促す今年最大の問題作。

デビュー以来、奇想天外な発想と破壊的なモチーフを用いて、人間の根源的な悪をえぐるように書いてきた吉村萬壱が満を持して放つ長篇。

B県海塚という町に住んでいる小学五年生の恭子。母親と二人で古い平屋に暮らすが、母親は神経質で隣近所の目を異常に気にする。学校では担任に、市に対する忠誠や市民の結束について徹底的にたたきこまれる。ある日亡くなった級友の通夜で、海塚市がかつて災害に見舞われた土地であると語られる――。

「文學界」に掲載後、各紙誌で絶賛され、批評家を驚愕・震撼させた、ディストピア小説の傑作。

内容説明

生れ育った町が忘れられず、人々は長い避難生活から海塚に戻ってきました。心を一つに強く結び合い、「海塚讃歌」を声を合わせて歌い、新鮮で安全な地元の魚を食べ、ずっと健康に暮らすことができる故郷―。密かにはびこるファシズム、打ち砕かれるヒューマニズム。批評家を驚愕・震撼させた、ディストピア小説の傑作。

著者等紹介

吉村萬壱[ヨシムラマンイチ]
1961年愛媛県松山市生まれ、大阪で育つ。京都教育大学卒。東京都、大阪府の高校教諭・支援学校教諭を務める。2001年「クチュクチュバーン」で第92回文學界新人賞、03年「ハリガネムシ」で第129回芥川賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

いつでも母さん

174
久し振りの吉村萬壱。なかなかに凄い。200頁に満たない本で、あっという間に読了するのだがじわじわ感が堪らない。おそらく・・おそらくだが思っただろう諸々の事を。現実の抱える不安を煽っている様で不気味だった。『海塚市』どこかにあるね。恭子もどこかにいるのだろう・・この世界、私の生きる世界は真実かータイトルもちょっと深い。2016/05/13

人間万事塞翁が馬ZAWAZAWA

154
みんなウスウス気づいているのに言い出せない。復興という名のものと気づかないふりをしている。くいしんぼの鼻血発言は大きく取り上げられた。だれかが勇気を持って現実を伝える必要性をひしひしと感じる。ある大臣が金目発言で問題になっているが、意外と核心を突いているのかもしれない!でもそれを言っちゃおしめえよと思っている人も多いはず!!瓦礫問題しかり、沖縄の基地問題でも、理想論を振りかざしても、現実基地を自分の住んでいる場所には受け入れない。事なかれ主義に筆で立ち向かう著者に拍手を送りたい。勝手よみかもしれませんが・2014/06/27

ケイ

147
吉村萬壱初読み。見ないふりをしてなかったことにする…という考え。強制力よりも、みなが自分の意思でそこに帰ってきて居ついているのが怖かった。見てはいけないものは見えないふりをして、臭い物には蓋をして。どういう場所が舞台とされているかは容易に想像がつくが、見ないふりをしながら生活しているのは私たちも同じこと。原発はダメだといいながら電気に依存した生活をして、他国の農薬を恐れながらコンビニの保存剤だらけのパンやおにぎりを食べて、なぜ賞味期限を過ぎても腐らないかになると思考が停止する。そんなことはいっぱいある。2016/09/20

nobby

138
これは何とも複雑でゾワゾワする読み終わりだ。そのタイトルから、もっと派手に何かの病気や被害などの展開を予想していたが、ある母娘の生活が淡々と描かれるのみ。時々起こる不可解な事態に、何となく香り出すキナ臭さ…それに気付かされての後半は、はたしてどちらが正常か異常か、全く分からなくなる。それを“ボラード病”と呼ぶものの、あくまでボカしたままで症状の鮮明な描写がないことが余計に恐怖を掻き立てる。大勢に混じる、現実に目を向け続ける、どちらにしても公権力が憚ることは否めない…2017/04/13

pino

124
独白の形式が功を奏している。突飛で鈍いタイプと称される私が語る、母、教師、町の人々。それぞれの性癖に読み手は混乱し、著者の爆裂した表現に惑わされる。一点のシミも許さない絆で繋がる世界。心置きなく他人の好意に甘えることが憚られる世界。最後まで読むと、積み上げてきた価値観が一変してしまう。一体、何を信じていいのか。傾いでいた心から錯覚が消え去り歪のない世界が見え始めた、あの日。少女はボラード病に罹患したのかもしれない。いつまでも立たされ続ける。明日がある限り。ボラードのように……一個の人間の抗いなど虫の如く。2017/04/18

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