出版社内容情報
「国策手段としての戦争を放棄する」――1928年パリで調印され,世界史上はじめて国家間の戦争が否定された叡知の結晶「不戦条約」.日本国憲法9条の淵源ともされるこの記念碑的な国際条約の成立過程に迫り,米・仏そして日本など関係各国の交錯の立体的な描写を通じて,その全体像を明らかにする.
内容説明
国家間の戦争放棄が史上はじめて謳われ、日本国憲法の淵源とされる記念碑的な国際条約をめぐる一大パノラマ。世界平和を追求した叡智の結晶の誕生に迫る。
目次
第1章 国際連盟と集団安全保障の原則
第2章 ブリアン「戦争違法化」提案の背景
第3章 フランス・アメリカ恒久友好条約案とその反響
第4章 アメリカ案(多国間戦争放棄条約)の形成
第5章 不戦条約の成立
第6章 不戦条約と日本の東アジア外交―内田康哉特使の列強との交渉
第7章 「人民の名において」―不戦条約批准をめぐる経緯
結論 不戦条約と戦後世界
著者等紹介
牧野雅彦[マキノマサヒコ]
1955年横須賀生まれ。1979年京都大学法学部卒業。1984年名古屋大学大学院博士課程単位取得満期退学。博士(法学)。現在、広島大学法学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
spanasu
1
国際連盟・ロカルノ条約という集団安全保障への米のコミットを求めるフランスと、戦争違法化を求める世論を持ちつつも関与を避けたい米の妥協として不戦条約が誕生する。筆者は日本において問題となった「人民の名に於て」こそが日米の憲法体制の違いが現れたとする。2020/07/08
フクロウ
0
「パリ不戦条約」の成立に至る各国の実情を丁寧に実証する。アメリカ・フランスの思惑(フランスはアメリカ国内世論の戦争違法化の潮流から対ドイツを見据えた二国間同盟にアメリカを引き摺り込みたいが、他方アメリカは同盟は断りたい。結果、不戦条約を多国間条約としてアメリカがフランスに投げ返し、フランスも断りづらくなった)を軸に、日本の対応(「in the name of peoples」の文言と解釈等の政局化)を描出する。「結論」章での憲法九条、象徴天皇制と日米同盟、国際連合の集団安全保障の関係の見通しが大変よい。2020/08/16