内容説明
珍しく棉のような雪が静かに舞い降りる宵闇、一九四三年の満洲で梶と美千子の愛の物語がはじまる。植民地に生きる日本知識人の苦悶、良心と恐怖の葛藤、軍隊での暴力と屈辱、すべての愛と希望を濁流のように押し流す戦争…「魂の底揺れする迫力」と評された戦後文学の記念碑的傑作。
著者等紹介
五味川純平[ゴミカワジュンペイ]
一九一六―九五年。作家。中国大連に近い寒村に生まれる。三三年大連一中卒業。満鉄奨学資金給付生となり、東京商科大学予科入学するも、中退。東京外国語学校英語部文科卒業。旧満州の昭和製鋼所入社。四三年招集され、ソ満国境を転戦、捕虜となり、四八年帰国
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ehirano1
81
遂に大作に手を出してしまって覚悟を決めました(汗)。上巻だけでも凄すぎる内容です。この後、中巻、下巻と続きますが、とにかくフラグだらけ且つ、これでもかと続く厳しい選択の連続でした。合理的思考が殆ど通じない暴力第一の時代に学問や教養はホントに無力なのか?学問や教養の使い方が悪いのか?もうホントどうしたらいいのコレ?2020/11/01
おたま
32
1943年、満州の鉱山会社に労務担当として赴任した梶。梶に寄り添う妻・美千子。鉱山の過酷な労働を前にして、梶は待遇改善に乗り出す。それが功を奏して、次第に増産として結果が表れてくる。美千子との愛に、そして、仕事に手応えを感じる梶。そこに、特殊工人(戦争捕虜の中国人)が500名送り込まれてくる。戦時下の満州で、特殊工人たちは奴隷のように扱われる。それでも、梶はなお彼らをも人間として扱い、人間として対していこうとする。当然、そうした梶の姿勢は、軍部の方針と摩擦を起こし、次第に窮地に追い込まれていくこととなる。2021/02/16
あらた
28
20数年ぶりに再読。古い小説なのにやはりストーリーが素晴らしく、グイグイと読ませる。一方、梶の潔癖な生き方を素晴らしいものと今回は無条件に思えなくなった自分は堕落したのか成熟したのかどちらだろうか?2023/09/19
カブトムシ
20
上中下の3巻あります。私は、基本的に長編が嫌いですから、読めなかったら、映画を観ることにしています。映画も嫌なら、要約(ダイジェスト)を読んでいます。それでもダメなら、講演を聴いています。私は、DVDを見た訳です。仲代達矢さんの主演でした。ビデオショップから借りてきて観ました。この「人間の條件」の映画で、女優の淡島千景さんも印象に残っています。中国語を話し、演技していました。主人公の仲代さんが、旧満州(中国東北部)の家でお風呂に入るシーンがあり、当時の生活が忍ばれました。私はハルビンには、2度行きました。
檜村
15
読み耽り一気に世界観へ引き摺り込まれこの小説を読んで良かった。梶さんのように屈することなく真っ直ぐ生きた人は当時でどれぐらいいたのであろう?満州の労働者にも寛容で、愛妻家、軍の権力者たちにも決して屈しない姿はまさに人間の條件ではなかろうか。続きも気になるので早速読みたいと思います。2017/03/02