内容説明
パリのゲルマント館の一翼に引っ越した一家。家主の公爵夫人は神秘の輝きを放つ貴婦人。その威光にオペラ座で触れた「私」は、コンブレー以来の夢想をふくらませ、夫人の甥のサン=ルーを兵営に訪問、しだいに「ゲルマンのほう」へ引き寄せられる。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
195
★『失われた時を求めて』岩波文庫版全14巻完読プロジェクト、 https://bookmeter.com/users/512174/bookcases/11525156 今回は、第5巻『ゲルマントのほうⅠ』、自己ベストタイまで来ました。スノッブなフランスの貴族社会の幕開けでした。続いて第6巻『ゲルマントのほうⅡ』へ。トータルの感想は、全14巻完読後に。 2020/02/06
lily
160
不安と嫉妬への考察がまた一段と高まる。恋に平穏な心は存在しないかのように。不安と嫉妬の振動こそがオアシスを求める原動力であるかのように。男の熱い友情にも目が離せない。心の中に入り込む隙間を探すが上手くいかない。慰めは現実が夢想を喚起することのみ。読み進める程、夢想に執着する主人公への愛着心が深まる一方だ。2019/08/15
のっち♬
96
ゲルマント家の館の一角に引っ越してきた「私」は公爵夫人に憧れ、彼女を紹介してもらうべくその甥を訪ねる。「人間とはわれわれのけっして入りこめない影である」—オペラ座や通りで待ち伏せして見つめた夫人に夢想を膨らませる主人公をはじめ、本巻でも随所で現実認識がいかに主観的なものかを示唆する。変わり果てた祖母との切ないやりとりの場面は、電話や写真などの当時の最新メディアが登場し、著者の繊細な優しさと感覚の鋭敏さが出た描写になっている。公爵夫人に対する立ち回りや、甥と愛人の痴話喧嘩や愛憎劇ではユーモアも効いている。2020/10/05
やいっち
84
吉川 一義の翻訳『失われた時を求めて』には各巻に挿入図版(写真)が豊富で、小生のようなミーハーには嬉しい。 各巻の表紙カバーには、プルーストの描いた絵が用いられているのも、この翻訳の特徴の一つ。
syaori
57
パリのゲルマント公爵邸の一角に暮らすようになった主人公一家。それによって「ゲルマント」の名の持つオレンジの光輝をまとった中世封建領主的な幻想も変化しますが、社交界でも「別格」という、やはり彼の幻想を詰め込んだ人物で、公爵夫妻が住む一角はもう魔法の世界。観劇の折、そんな公爵夫人の一流の貴婦人ぶりを見せられて手まで振ってもらったら、まあ舞い上がりますよね。ゲルマント家への道を求め、サン=ルーを頼って兵営まで訪ねたりする主人公。しかし努力は実らず、パリで、再びヴィルパリジ夫人が浮上してきたところでつづく!2017/07/11