出版社内容情報
1950年から30年以上にわたり描き続けられた丸木位里・俊の連作「原爆の図」.体験の集積,平和運動,戦争責任-その変遷は,日本人の原爆・戦争観の変遷とも連動していた.「原爆の図」から浮び上がる〈記憶〉の選択と再構築.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
どんぐり
68
8月は日本人にとっての広島・長崎の記憶。文学であれば、井伏鱒二の『黒い雨』、原民喜『夏の花』、峠三吉『原爆詩集』。絵画であれば、真っ先にこの『原爆の図』が思い浮かぶ。この時期にこの種の本を読んでみるのもいいだろう。原爆の図は、第1部「幽霊」に始まり、第15部「長崎」まであり、日本画家である丸木位里と洋画家で絵本作家の丸木俊によって30年以上にわたって描き続けられた作品群である。本書は、丸木夫妻が、原爆体験に深く突き動かされ、どのように「原爆の図」を描いてきたのか、そしてその後の平和運動の高揚など夫妻の足跡2015/08/25
zatugei
1
丸木位里・俊夫妻、それぞれの画家としての経歴と「原爆の図」についての評伝。まず、描かれたときは「原爆」の情報がほとんどなかったという事実。それを知ってもらいたくて描いたことで、その絵は、単なる絵画以上のものになった。日本画家と洋画家による共同作業という特異性。二人とも原爆の直撃を受けたわけではないのに、「被曝専門家」になってしまったことの複雑な心性。敗戦から占領期、解放期、高度経済成長期と時代に翻弄されるその評価など。2020/02/11
mimm
1
てっきり原爆体験者たちによる絵画集かと思いきや、一組の画家夫婦の話だったのね。初めの略奪愛やら戦後の社会運動活動やらもうどん引くわーと思いつつ、注釈読み読み気づいたこと。略奪愛によって十字架を背負った上での夫婦の営みは、絵画の共同製作しかなかったんじゃないかな、と。だから離婚云々の話もあり、片割れの死後、その方面の制作をやめた、と。そう理解したのですが、どんなもんでしょう。2015/01/17