内容説明
日本の近代国家形成とハチ公物語の生成、十九世紀の大英帝国世界支配と動物愛護運動の中で生まれるボビー、ウィーダ作『フランダースの犬』のパトラッシュと二面性。“忠犬”に生まれ変わる背景を日英文化比較や社会・文化史の視点から探る。
目次
第1章 忠犬とその系譜(伝統的な忠犬像;新しい忠犬像)
第2章 日本の忠犬・ハチ公とナショナリズム(「忠犬ハチ公」の誕生;ナショナリズムと「忠犬」 ほか)
第3章 イギリスの忠犬・ボビーと動物愛護運動(「グレイフライアーズ・ボビー」の虚実;「忠犬ボビー」の物語成立の背景 ほか)
第4章 フランダースの忠犬・パトラッシュとイングリッシュネス(ネロとパトラッシュの物語;原作者ウィーダの数奇な生涯 ほか)
第5章 「忠犬」の果たした役割
著者等紹介
飯田操[イイダミサオ]
1946年兵庫県生まれ。現在、広島大学名誉教授。博士(学術)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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タカラ~ム
2
有名な3匹の忠犬(ハチ、ボビー、パトラッシュ)を題材にただ単純に飼い主に無償の愛情を注いでいただけの犬たちがいかにして“忠犬”に祭り上げられていったのかを考証する。渋谷で主人の帰りを待ち続けたハチもエジンバラで主人の墓に寄り添い続けたボビーもネロとともにその命の灯を消していったパトラッシュも「主人の恩に報いた」のではなく「主人を愛して」いただけであり、それを忠犬にしたのは他ならぬ人間の思惑なのだということがわかる。それでも、彼らの主人を愛する想いが消えるわけではないことは知っておかなければいけない。2013/09/06
jyotis
0
忠犬と国民国家形成、動物愛護運動の関係について。 ハチ公: 日本犬保存のシンボルにしようとする動きがあったが、結局忠君愛国のプロパガンダに使われた。 グレイフライアーズ・ボビー: 実話とされるが、真相には謎も多い。だが、それにもかかわらずこの物語は当時のイギリスにおける狂犬病の流行と犬登録税に対抗する動物愛護運動に利用されていた。 フランダースの犬: ベルギーでは日本人向けの観光資源に。原作はウィーダというペンネームのイギリス人で、数奇の人生を歩んだ。英国においては彼女の作品は忘れられるが、アメリカでは2013/10/16
aoto
0
パトラッシュについて詳しく知れる。アニメの昇天はスポンサーの要望とクリスチャン意図がある。原作者はそこまで動物愛護訴えてない。パトラッシュとネロとのあいだに絆シーンが描かれてない物語なので異質。これには気づかなかった。2013/09/20