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三十三

篠田英朗

平和な社会を構築するために―
身近な問題としての憲法改正


●篠田英朗さんエッセイ

 平和とは、身近な問題であり、遠く離れた問題であるかもしれません。

自分の心の平和、家族の生活の平和、といえば、身近な問題でしょう。日本の平和、といっても、それはなくては困るもの、であると思います。

 でも日本の平和主義の問題、と言われると、なんだか大げさになってきたな、と思う人もいるかもしれません。それがアジアの小国の平和、アフリカのどこかの村落の平和だとかなると、それは大切なんだろうけど、よくわからないな…、とほとんどの人は思うのではないでしょうか。

 自分の身近な平和が一番大切であるのは、自然なことでしょう。でも遠く離れたところの平和も、そこに住んでいる人にとっては、とても大切なことです。そのことについて、ふと考えてみたくなる時もあるかもしれません。何かのきっかけで、アフリカの紛争国から来た人と、友だちになるかもしれません。遠くの国の平和について知ることで、自分の身の周りの平和について、もっと深く考えさせられるかもしれません。

 まず自分の生活の中に、突然、戦争が入り込んできたときのことを考えてみましょう。いったい誰がこんな迷惑なことを始めたんだ、とあなたは思うでしょう。自分の家族が戦争の被害に遭ったら、どうしてこんなことが許されるんだと、憤るでしょう。自分の友人がいつの間にか武器を手にとって戦い始めたら、何でこんなことが起こったんだと、頭を抱えるでしょう。でもこうしたことは、世界のどこかで、何度も何度も繰り返されてきていることです。

 どんなに遠い国で起こっている戦争の問題であっても、決して異次元世界の出来事ではありません。たとえ聞いたこともない場所で行われている平和のための努力であっても、想像もできない特殊な技術を使って行うようなものではありません。われわれと同じ人間たちが、戦争を行い、平和を作ろうとしているのです。

 日本人だって、あなたの町に生きてきた人たちだって、みんな同じでした。日本人も戦争に歓声をあげ、戦争に打ちひしがれ、平和を求め、平和に酔いしれたのです。

 少し立ち止まって、この世界の戦争と平和を、そして日本の戦争と平和を、考えてみる時間があってもいいかもしれません。遠く離れた問題であっても、身近な問題であっても、きっとあなたは何かを感じるでしょう。だって、戦争と平和は、決してあなたと無関係な話ではないのですから。

【篠田英朗】


●篠田英朗さんプロフィール

篠田英朗さん 学生時代より難民救援活動に従事し、クルド難民(イラン)、ソマリア難民(ジブチ)への緊急援助のための短期ボランティアとして派遣された経験などを持つ。国連カンボジア暫定統治機構(UNTAC)では、日本政府から派遣されて、投票所責任者として勤務した。ロンドン大学(LSE)で国際関係学Ph.D.を取得して、ロンドン大学およびキール大学で非常勤講師を務めた後、1999年より広島大学平和科学研究センター助手、2005年より現職。紛争後地域における平和構築活動について研究を進めている。ケンブリッジ大学ローターパクト国際法研究センターおよびコロンビア大学人権研究センターの客員研究員を歴任。著書に、『平和構築と法の支配:国際平和活動の理論的・機能的分析』(創文社、2003年/朝日新聞社2003年第3回大佛次郎論壇賞受賞)、『Re-examining Sovereignty: From Classical Theory to the Global Age』(Macmillan, 2000[中国語訳版{商務印書館、2004年}])、『日の丸とボランティア:24歳のカンボジアPKO要員』(文藝春秋、1994年)。その他、『紛争と人間の安全保障:新しい平和構築のアプローチを求めて』(国際書院、2005年)(上杉勇司と共編)など、共著・論文多数。

http://home.hiroshima-u.ac.jp/hshinoda/

●篠田英朗さん研究業績リスト

■ 学術著書(単著)
1.『国際社会の秩序』(東京大学出版会、2007年)(近刊)。
2.『平和構築と法の支配:国際平和活動の理論的・機能的分析』(創文社、2003年/255頁/朝日新聞社第3回大佛次郎論壇賞受賞)
3.『Re-examining Sovereignty: From Classical Theory to the Global Age』 (London: Macmillan, 2000, pp. 228)*中国語訳版(2004年)

■ 編著
1.(上杉勇司と共編)『紛争と人間の安全保障:新しい平和構築のアプローチを求めて』(国際書院、2005年)、306頁。
2.「IPSHU English Research Report Series No. 19: Conflict and Human Security: A Search for New Approaches of Peace-building, edited with Ho-Won Jeong」(Institute for Peace Science of Hiroshima University, 2004, pp. 327.)
3.「Ethics and International Relations, edited with Hakan Seckinelgin」(London: Palgrave, 2001, pp. 212.)


■場所 紀伊國屋書店新宿本店 5Fカウンター前
■会期 2007年8月6日(月)〜9月上旬
■お問合せ 紀伊國屋書店新宿本店 03-3354-0131

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