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二 十 九

越 川 芳 明

《 境 界 》 の 彼 方
ボ ー ダ ー 文 化 論 入 門 5 0 冊


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越川芳明さんが選ぶ「私家版 ボーダー文化論入門書50」
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Vol.1

文化の場所―ポストコロニアリズムの位相 文化の場所 ポストコロニアリズムの位相

ホミ・K・バーバ【著】、本橋哲也・正木恒夫・外岡尚美・阪元留美【訳】
法政大学出版局(2005-02-15出版)
ISBN:9784588007781

バーバは、ポストコロニアリズムの思想家として難解だと思われている。それは「第一世界」の少数派として、その内部にある差別の連鎖をいかに断ち切るか、自身の文章で実践しているからだ。「理論の上でも革新的で、また政治的にも重要なのは、そういう主体性を考えるにあたって、起源を語る物語を越えることだ」。「起源」とは、純血の神話だったり民族の誇りだったりするが、その代わりにバーバが拠って立つのは、多数派からは判断のしがたいどっちつかずの「中間地点」、すなわち言説の境域である。

“帝国”―グローバル化の世界秩序とマルチチュードの可能性 “帝国” グローバル化の世界秩序とマルチチュードの可能性

アントニオ・ネグリ、マイケル・ハート【著】、水嶋一憲・酒井隆史・浜邦彦・吉田俊実【訳】
以文社(2003-01-20出版)
ISBN:9784753102242

IMF、WTO 、多国籍企業など、グローバルネットワークによる新自由主義的かつ新植民地主義的な〈帝国〉に対して、ナショナリスティックな反グローバリズムの殻に閉じこもるのではなく、同様のトランスナショナルなコミュニケーションを利した闘争を説く。89年の天安門事件、92年のロス暴動、94年に始まるメキシコ・チアパスの武装蜂起など、ローカルな闘争にすぎないものを、未来の新たな公共空間を創出する闘争につなげる。

マグレブ 複数文化のトポス―ハティビ評論集 マグレブ 複数文化のトポス―ハティビ評論集

アブデルケビール・ハティビ【著】、沢田直【編訳】、福田育弘【訳】
青土社(2004-08-10出版)
ISBN:9784791761340

ハティビは1938年モロッコ生まれの思想家。アルジェリア出身のジャック・デリダと同様、旧宗主国の言語であるフランス語で書き、アラブの一神教の世界とフランスの普遍主義とを俎上にのせ、どちらの世界からも距離をおいた「余白」に立つ。自らの説く「複数文化」や「他なる思考」をパレスチナ問題に応用した、きわめて挑発的な文章「反ユダヤ主義とシオニズムを超えて」を含む、実践的な提言を行なう書物。

女性・ネイティヴ・他者―ポストコロニアリズムとフェミニズム 『女性・ネイティヴ・他者 ポストコロニアリズムとフェミニズム』

トリン・T・ミンハ【著】、竹村和子【訳】
岩波書店(1995-08-25出版)
ISBN:9784000029506
[ 品切・入手不可 ]

性差別と人種差別は同根である。ミンハはいう。「〈私/わたし〉がいかに「性差別が男を非人間的にする」かを理解すれば、〈私/わたし〉は、「いかに私の人種差別が私を非人間的にしている」かがわかるのだ。……このように、支配と人種差別は、 フェミニズムにとって緊急の課題なのである」(差異──特別な第三世界の女の問題)。有色フェミニストの「特権」に関して洞察した文章だ。

僕はアメリカ人のはずだった 僕はアメリカ人のはずだった

デイヴィッド・ムラ【原著】、石田善彦【訳】
柏艪舎(2003-04-18出版)
ISBN:9784434029943

ムラは、日系三世のアメリカ人だが、それは、アメリカと日本の二つの国の文化からはじき出され、どっちつかずの状況を生きるということを意味する。それが狭隘なナショナリストへの道を閉ざし、もう一つの道を発見させることになる。既存の国境によって自らの生き方を狭めるのではなくて、「世界文化を追い求める人間」へと変わること。パレスチナ系アメリカ人エドワード・W・サイードの思想に通じるそうした「発見」を、日系人の側からなしとげる。

book カフカ マイナー文学のために

ジル・ドゥルーズ、フェリックス・ガタリ【著】、宇波彰【訳】
法政大学出版局(1978-07出版)
ISBN:9784588000850

21世紀において、「国民作家」と呼ばれるような人気作家は、商品として消費されるだけである。一方、「マイナーの文学は、マイナーの言語による文学ではなく、少数民族が広く使われている言語を用いて創造する文学である」と、著者はいう。プラハで、ドイツ語で書く少数民族・ユダヤ人のカフカ。「その小さすぎる空間は、個人の事件がすべて直接に政治に結びつくようにさせている」とも。世界のボーダーにいる移民作家たちにも共通する問題を提起する。

複数にして単数の存在 複数にして単数の存在

ジャン=リュック・ナンシー【著】、加藤恵介【訳】
松籟社(2005-04-01出版)
ISBN:9784879842299

「すべての文化はそれ自体において『多文化的』であり、それは単に、常に先行する異文化受容があり、単純で純粋な起源なるものはないがゆえにだけでなく、より深いところで、文化の振る舞いはそれ自体、混交の振る舞いだからである」(「混交の称揚」)。フランスの哲学者であるが、湾岸戦争やサラエボ戦争にも、積極的に発言をしている。個人や国家のアイデンティティを探るときに陥りがちな「純血主義」のフィクションを鋭く指摘する。

越境するクレオール―マリーズ・コンデ講演集 越境するクレオール マリーズ・コンデ講演集

マリーズ・コンデ【著】、三浦信孝【編訳】
岩波書店(2001-09-25出版)
ISBN:9784000222600

カリブ海グァドループ出身のフランス語作家。「率直に言って、もし私の祖先が代々なんの衝突も断絶もなく生きていたならば、私はいまバンバラ語かハウサ語、あるいはヨルバ語を話していたでしょう……ところが、私は皆さんにフランス語で話しています。ある意味で、私が口にするフランス語の一語一語が、私の祖先がこうむった歴史的敗北とアイデンティティの喪失を物語っています」と、コンデは語り始める。宗主国から言語を奪われた者がどのように言語手段を獲得するか、被植民者の歴史と自身の経験を通して語る。

黒い皮膚・白い仮面 黒い皮膚・白い仮面

フランツ・ファノン【著】、海老坂武・加藤晴久【訳】
みすず書房(1998-09-22出版)
ISBN:9784622050285

「植民地化された民族はすべて、文明を与える国の言語に対し、すなわち本国の文化に対して位置づけられる。植民地の原住民は、本国の文化的諸価値を自分の価値とすればするだけジャングルの奥から抜け出たことになる。皮膚の黒さ、未開状態を否定すればするだけ、白人に近くなる」と、ファノンは語る。植民地化された人間は、知らずして宗主国の白人の主人によってコンプレックスを刷り込まれる。主人が教えてくれないコンプレックス克服法を、本書は教えてくれる。

文化と帝国主義 『文化と帝国主義』<1巻><2巻>

エドワード・W・サイード【著】、大橋洋一【訳】
みすず書房(1998-12-18出版(1巻)、2001-07-25出版(2巻))
ISBN:9784622031970(1巻)、9784622032045(2巻)

オリエンタリズム』で中東を対象にした〈オリエンタリズム〉議論を、さらに広げてヨーロッパによるアイルランド、アジア(インド)、 アフリカ、カリブ(ジャマイカ)などに応用する。ヨーロッパによる帝国主義的でステレオタイプな「他者」表象を、コンラッドやキプリング、ジェイン・オースティンなどの近代小説の中に見る。というのも、「帝国主義的な姿勢とか言及とか経験の形成において、小説の果たした役割は、とてつもなく大きい」というのが、サイードの信念だからだ。

世界文学のフロンティア〈1〉旅のはざま 『世界文学のフロンティア〈1〉旅のはざま』所収
「ボーダーの呪術師」キジエルモ・ゴメスニペーニャ【著】

今福龍太・沼野充義・四方田犬彦【編】
岩波書店(1996-12-10出版)
ISBN:9784000261418
[ 品切・入手不可 ]

ポスト構造主義的な言語理論とポストコロニアリズム理論を混ぜこぜにしたようなパフォーマンスを見せる。特徴は衣装と声の〈トランスヴェスティズム〉の戦略だ。蝋燭やバッチその他、さまざまな文化意匠を周囲に配して、「単一文化主義」を笑いのめし、鬘や髭をつけ替えて、ときに制圧する国境警備隊(ミグラ)、ときに被害を受ける違法移民(ポヨ)、またときには移民ガイド(コヨーテ)に変身して、多様な声を駆使してボーダーのトリックスター的多重人格者を演じる。

精神疾患と心理学 精神疾患と心理学

ミシェル・フーコー【著】、神谷美恵子【訳】
みすず書房(1970-02出版)
ISBN:9784622023401

病気やタブーは特定社会の文化を映し出す鏡である、とフーコーは説く。「ジャネの一患者は幻視や、いろいろなスティグマを示していたが、この女性も、もしべつの風土にいたならば、幻をみる神秘家とか、奇跡を行なう人物、ということになったろう」と。さらにそうした病の相対性についてこう述べる。「各々の文化は病についてあるイメージを抱くが、そのイメージの輪郭は、その文化が無視するか、または抑圧する人類学的可能性の総体によって描かれる」と。

セックス・チェンジズ―トランスジェンダーの政治学 セックス・チェンジズ トランスジェンダーの政治学

パトリック・カリフィア、サンディ・ストーン、竹村和子、野宮亜紀【著】、石倉由、吉池祥子【翻訳】
作品社(2005-07-10出版)
ISBN:9784861820472

染色体上の性別を越え、反対の性別に同一化する人を〈トランスセクシュアル〉という。病気でも何でもないのに、その性のゆらぎゆえに、社会では〈ボーダー・ピープル〉として生きざるをえない状況がある。歴史的にも、専門家からも誤解と偏見に晒され、誤った「治療」をされてきた事実が広範な聞き取り調査や文献の読解によって明らかになる。「トランセクシュアルたちは、正しいことと間違ったこと……といったわたしたちの考えに挑みかけている」。本書には、日本における「性同一障害」をめぐる論考も収録されていて、先駆的かつ貴重な文献だ。

BBorderlands/LA Frontera : The New Mestiza Borderlands/LA Frontera : The New Mestiza

Gloria Anzaldua
Aunt Lute Books(1999-04出版)
ISBN:9781879960565

アンサルドゥアは、ギジェルモ・ゴメス=ペーニャと並ぶボーダー詩人。米国とメキシコの国境における文化衝突やチカーノ共同体における性の抑圧などを題材にして、それをみずからの体験から語るだけでなく、斬新な方法論に基づき芸術にまで高めた。ボーダー文学の先駆者となった本書の一部「野生の舌を飼いならすには」は、管啓次郎によってすでに日本語にされているが(『旅のはざま』岩波書店)、まるごとの翻訳が待たれる。

book Border Writing : The Multidimentional Text (Theory and History of Literature)

D. Emily Hicks
Univ of Minnesota Press(1991-11出版)
ISBN:9780816619832

先駆的なボーダー理論書。「ボーダー文学を普遍的なアピールを有する世界文学たらしめるのは、単一言語内部にある多様な言語の強調である」と、エミリー・ヒックスは述べる。ヒックスはそうしたボーダー理論を、コルタサルをはじめとするラテンアメリカの小説群に応用する。かつては、ゴメス=ペーニャのパフォーマンスにも言語理論的なサポートを行なっていた、過激な「チカーナ」学者だ。

An Other Tongue : Nation and Ethnicity in the Linguistic Borderlands An Other Tongue : Nation and Ethnicity in the Linguistic Borderlands

Alfred Arteaga
Duke Univ Press(1994-10出版)
ISBN:9780822314622

編者は現代思想の第一線で活躍するチカーノ詩人・批評家。国民国家とエスニシティをめぐるこの論文集には、インド人のニランジャナ、先住民の血をひくヴィゼナー、そしてお馴染みのスピヴァックほか、15本の論文が収録されている。とても刺激的なのは、フランス人であるジャン=リュック・ナンシーの論文で、そこでは自身を混血メスチソと定義。スペイン人、ケルト人などの血以外に、重要なのは「自分でも分からない血」が混ざっていることだと述べている。

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