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新宿本店3階じんぶんや 原一男選「ここからドキュメンタリーは生まれる」

紀伊國屋書店新宿本店3階のブックフェア「じんぶんや」、今回の選者は原一男さん。
『ここからドキュメンタリーは生まれる』
という表題のもと、じんぶんやにエッセイをいただきました。

原一男さんエッセイ
「私の40冊」

原一男写真.jpg
 こうして40冊を選んでみると自分の読書傾向が露わになってオモシロいものだなあと再認識。
 最も関心が強いのは映画のもの。職業柄、当然だ。ドキュメンタリーはもちろん、劇映画の先輩監督を論じたもの、先輩監督が書いたものなど。
 20代に出会って衝撃を受けた田原総一朗著の『青春―この狂気するもの』が絶版なのは寂しい。土本典昭の『映画は生きものの仕事である』は文章そのものが美しい調子で、後年自分も文章を書くようになるのだが、土本の美しさは真似ができない。佐藤忠男の、大島渚、今村昌平について書かれたものは、幾度も読み返している。私にとっては最良の教科書だ。映画評論は松田政男が過激で好きだなあ。後年、井上光晴に出会って映画を撮りながら彼の「虚構」に関する著作を読んで、凄く勉強になった。「小説の書き方」はドキュメンタリー論に置き換えても十二分にいける。
 次に多いのがノンフィクション。澤木耕太郎、藤原新也、高山文彦、佐木隆三など。読みながら、コレ映画にならないかしら? とつい思ってしまう。
 大人になってからは比率で言えばノンフィクションが多くなったが、少年時代は小説も多く読んでいた。松本清張『点と線』は言うまでもなく、『張り込み』『眼の壁』『黒い画集』『黒い福音』など夢中で読み耽った。吉川英治『宮本武蔵』や司馬遼太郎『国盗り物語』も好きだった。先述の井上光晴『心優しき反逆者たち』は映画化したいものだと心密かに想っている。
 広く評論のジャンルは、岡本太郎、太田竜、平岡正明、芹沢俊介など。
 写真集もかなり買い求めた。写真家の中で、森山大道、篠山紀信、桑原史成の3人がお気に入りで、森山の『にっぽん劇場写真帖』や『写真よさようなら』は、今も大切に所有している。篠山は出版の点数が多くてとても全部をそろえるというわけにはいかないが、アイドルを撮った分厚いものなんかは好きだ。中でも『百恵』は最高傑作だと思う。
 桑原はなんといっても『水俣病』を撮ったものが最高だ。
 最後にこれだけは、入れておきたいと思ったのが、D・カーネギー『人を動かす』だ。子どもの頃から対人関係が苦手で、苦痛で、何とか克服しなければ、と悩み、対人関係のハウツーものに片っ端から手を出した。その中で、この1冊だけ手元に置いておけばいいんだ、と思ったのが『人を動かす』だ。70才になった今も、人間関係で悩むことは依然続いているが、悩んだ時はコレを読めばいいんだ、と本棚に眼をやり、タイトルを見るだけで安心できる"精神安定剤"になっている。


原一男(ハラ・カズオ)さんプロフィール
1945年生まれ。山口県宇部市出身。1972 年、小林佐智子と「疾走プロダクション」を結成。次々に先鋭的ドキュメンタリー作品を発表、高い評価を得る。1987 年の『ゆきゆきて、神軍』により、ベルリン映画祭カリガリ映画賞、パリ国際ドキュメンタリー映画祭グランプリ受賞。1991年より文化庁新進芸術家在外研究員としてアメリカに留学した。1995 年、次世代のドキュメンタリー作家の養成を目指し、自ら塾長となって「CINEMA 塾」を開塾。現在、大阪芸術大学映像学科教授。シューレ大学アドバイザー。


ドキュメンタリ-は格闘技である 原一男VS深作欣二 今村昌平 大島渚 新藤兼人

ドキュメンタリ-は格闘技である 原一男VS深作欣二 今村昌平 大島渚 新藤兼人

原一男 / 筑摩書房
2016/02出版
ISBN : 9784480873859
価格:¥2,376(本体¥2,200)

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「ゆきゆきて、神軍」「さようならCP」など異色のドキュメンタリーで有名な原一男。彼と日本映画の巨匠が語る映画・エロス・虚実についての極私的な対談集。[ウェブストア内容情報より]


原一男さん選書&コメント

映画は生きものの仕事である 私論・ドキュメンタリ-映画

映画は生きものの仕事である 私論・ドキュメンタリ-映画

土本典昭 / 未来社
2004/06出版
ISBN : 9784624710095
価格:¥3,780(本体¥3,500)

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土本監督のドキュメンタリーの方法論が語られているが、その内容以上に、土本さんの文章が驚くほど文学的に美しく、かつ、情熱的に語られていて、うなってしまう一冊。

今村昌平 映画は狂気の旅である

今村昌平 映画は狂気の旅である

今村昌平 / 日本図書センター
2010/02出版
ISBN : 9784284700450
価格:¥1,944(本体¥1,800)

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"映画は狂気の旅である"というフレーズが大好きだ。もう一つ今村監督のフレーズで気に入ってるのが、「映画は人間を描くものである」だ。私は、これに"感情"という言葉を加えて、「映画は人間の感情を描くものである」というふうに学生たちにいっています。

君たちはなぜ、怒らないのか 父・大島渚と50の言葉

君たちはなぜ、怒らないのか 父・大島渚と50の言葉

大島武、大島新 / 日本経済新聞出版社
2014/05出版
ISBN : 9784532169282
価格:¥1,620(本体¥1,500)

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大島監督の二人の息子さんが書いた。このタイトルのフレーズも私の気持ちにピッタリ当てはまる。日本人は、もっと怒らなければいけない。なぜ怒らないのか!という気持ちにはとても共感できる。

今日の芸術 時代を創造するものは誰か

今日の芸術 時代を創造するものは誰か

岡本太郎 / 光文社
1999/03出版
ISBN : 9784334727895
価格:¥604(本体¥560)

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「日本人ってなんだろう?」という問いをいつも発してきたように思う。そんな時、この本は、その問いに答えてくれた本である。この本は岡本太郎の生き方論、人生論としても読める。

自分の中に毒を持て あなたは“常識人間”を捨てられるか

自分の中に毒を持て あなたは“常識人間”を捨てられるか

岡本太郎 / 青春出版社
1993/08出版
ISBN : 9784413090100
価格:¥504(本体¥467)

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この本で岡本太郎は「芸術の役割をはっきりと体制的なるものに対して牙を砥げ」というメッセージを伝えている。私のなかでは、『人を動かす』と同じ意味で人生論の名著である。

復讐するは我にあり

復讐するは我にあり

佐木隆三 / 文藝春秋
2009/11出版
ISBN : 9784167215170
価格:¥928(本体¥860)

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当時、私がアシスタントをしていた田原総一朗さんがテレビでこの事件をやると言い出した。資料を集めて、構成をつくっていたが、今村プロが出版社と交渉しており、テレビ化の権利も含めて抑えられていると知って諦めた。悔しさが残り、忘れられない。

引きこもるという情熱

引きこもるという情熱

芹沢俊介(評論家) / 雲母書房
2002/05出版
ISBN : 9784876721214
価格:¥1,728(本体¥1,600)

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芹沢さんの書くものは必ず、多数から批判されている少数者の側を擁護する論陣を張る。「ひきこもりは間違っている」という発想に対して、いや、そうじゃない、と。
母性に関しても、圧倒的に母性の優位性を説く多数に対して、母性のもっている暴力性について論じる、というふうに。これらは考え方の勉強になる。

母という暴力

母という暴力

芹沢俊介(評論家) / 春秋社
2005/06出版
ISBN : 9784393376010
価格:¥1,728(本体¥1,600)

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『引きこもるという情熱』と同コメント

定本言語にとって美とはなにか 1

定本言語にとって美とはなにか 1

吉本隆明 / 角川書店
2001/09出版
ISBN : 9784041501061
価格:¥802(本体¥743)

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この時代、私たちはこれらを読むのが当たり前だった。ある意味、人生の教科書となったひとつでもある。

定本言語にとって美とはなにか 2

定本言語にとって美とはなにか 2

吉本隆明 / 角川学芸出版
2001/10出版
ISBN : 9784041501078
価格:¥761(本体¥705)

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『定本 言語にとって美とはなにか〈1〉』と同コメント

共同幻想論

共同幻想論

吉本隆明 / 角川書店
1982/01出版
ISBN : 9784041501016
価格:¥777(本体¥720)

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『定本 言語にとって美とはなにか〈1〉』と同コメント

映画は父を殺すためにある 通過儀礼という見方

映画は父を殺すためにある 通過儀礼という見方

島田裕巳 / 筑摩書房
2012/05出版
ISBN : 9784480429407
価格:¥864(本体¥800)

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「なるほどな」とうなった一冊。多くはハリウッド映画を扱っているが、日本映画にも触れている。若い人にはぜひとも読んでみてほしい。

定本 映画術

定本 映画術

フランソワ・トリュフォ-、山田宏一 / 晶文社
1990/12出版
ISBN : 9784794958181
価格:¥4,320(本体¥4,000)

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「あの場面はカメラをこう動かして、こう撮っているんだよ」と具体的なエピソードに基づいて解説している一冊。ヒッチコックが編み出した撮り方を多くの人が真似している。現場の撮影のオリジナルのアイディアが解説されていて興味が尽きない。

そのほかの選書
・『ペット化する現代人 自己家畜化論から』(NHK出版)小原秀雄+羽仁進
・『鞍馬天狗のおじさんは 聞書アラカン一代』(七つ森書館)竹中労
・『山口百恵は菩薩である』(講談社)平岡正明
・『人の砂漠』(新潮社)沢木耕太郎
・『テロルの決算』(文藝春秋)沢木耕太郎
・『一瞬の夏 上・下』(新潮社)沢木耕太郎
・『火花 北条民雄の生涯』(七つ森書館)高山文彦
・『AV女優』(文藝春秋)永沢光雄
・『いのちの女たち』(パンドラ)田中美津
・『人を動かす』(創元社)D・カーネギー
・『逆表現の思想』(三一書房)片岡啓治
・『今村昌平の世界 増補版』(学陽書房)佐藤忠男
・『映画を穫る』(太田出版)山根貞男
・『恥の文化再考』(筑摩書房)作田啓一
・『菊と刀』(平凡社)ルース・ベネディクト
・『宮本武蔵 1〜8』(新潮社)吉川英治
・『国盗り物語 1〜4』(新潮社)司馬遼太郎
・『点と線』(新潮社)松本清張
・『黒い福音』(新潮社)松本清張
・『けものみち 上・下』(新潮社)松本清張
・『「かわいい」論』(筑摩書房)四方田犬彦
・『井田真木子 著作撰集』(里山社)井田真木子
・『井田真木子 著作撰集 第2集』(里山社)井田真木子
・『もの食う人々』(角川書店)辺見庸
・『天皇の影法師』(中央公論新社)猪瀬直樹
・『日本凡人伝』(筑摩書房)猪瀬直樹
・『風景の死滅 増補版』(航思社)松田政男
・『沈黙より軽い言葉を発するなかれ―柳美里対談集』(創出版)柳美里
・『観ずに死ねるか ! 傑作ドキュメンタリー88』(鉄人社)
・『タケノコごはん』 大島渚(ポプラ社)
・『パパはマイナス50点』小山明子(集英社)


「じんぶんや」とは?

jinbunya.gifこんにちは。じんぶんやです。
2004年9月、紀伊國屋書店新宿本店に「じんぶんや」という棚が生まれました。

「じんぶんや」アイデンティティ1
★ 月 が わ り の 選 者
「じんぶんや」に並ぶ本を選ぶのは、編集者、学者、評論家など、その月のテーマに精通したプロの本読みたちです。「世に溢れかえる書物の山から厳選した本を、お客様にお薦めできるようなコーナーを作ろう」と考えて立ち上げました。数多の本を読み込んだ選者たちのおすすめ本は、掛け値なしに「じんぶんや」推薦印つき。
「じんぶんや」アイデンティティ2
★ 月 が わ り の テ ー マ
人文科学およびその周辺の主題をふらふらと巡っています。ここまでのテーマは、子どもが大きくなったら読ませたい本、身体論、詩、女性学...など。人文科学って日々の生活から縁遠いことではなくて、生きていくのに案外役に立ったりするのです。

ご愛顧のほど、どうぞよろしくお願いします。

【じんぶんや】原一男選
ここからドキュメンタリーは生まれる

場  所 紀伊國屋書店新宿本店 3Fカウンター前
会  期 2016年3月7日(月)~4月上旬
お問合せ 紀伊國屋書店新宿本店3階 03-3354-5703

2016.03.07 特集[TOP]