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第
三十六
講
田中 純
選
都市の表象文化論
―その徴候的知のために
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●田中 純さんエッセイ
眼に見える姿ばかりが都市なのではない。それぞれの都市にはそれぞれの闇があり、音があり、匂いがあり、肌触りがある。だからこそ、愛する都市があり、憎む都市がある。その両方が合い混じった都市もある。都市の名だってそうだ。学生時代に東西ドイツを走り回って旅行ガイドブックを書く仕事をした頃、壁で分断された街の名「Berlin」を「ベルリーン」と小声で呟く時、その響きは恋人の名のように思えた。
そんな響きの感触を語りたい。見知らぬ街の路地に迷い込んで彷徨った時の、奇妙な陶酔で痺れたような感覚をもう一度味わいたい。「いつか訪れたことがあった」という既視感で懐かしくなる場所の不思議を知りたい。何の変哲もない街角なのに、いつも何かが起こりそうな不穏な気配の由来を探りたい。――そんな風に五感と身体まるごとで感じ取られた都市について論じる方法があっていいはずだ。「都市の表象文化論」とはそうした方法の試みである。
それは、都市についての個人的な紀行文でも、都市工学や社会学のような客観的分析でもない。その目的を、身体で感性的に経験される都市の、その経験の構造を解明すること、と言い表わしてもよいだろう。ただし、ここで問題にする経験は、都市が喚起する遠い記憶やかすかな予感まで含んでいる。そんな定かでない過去の痕跡と未来の兆しをとらえるわざを、ここでは「徴候的知」と呼んでみた。それはいわば獲物の跡を目ざとく見つける「狩人の知」である。都市を現場にした写真家や作家、画家、建築家たちは、そうした知を備えた、優れた狩人だ。彼らが体得した技術に学ぼうというわけである。
その狩りで駆使されるのは、感覚神経の尖端で探られた繊細な論理である。そうした論理を明らかにしようとする試みは、いろいろな学問分野に散在したままだ。だからこそ、それらを発掘し集めて関係づけることにより、この繊細な感覚によってしか見えてこない、都市の官能的な表情を描き出そうとしたのである。
「書を捨てよ、町へ出よう」と寺山修司は言った(彼自身が傑出した都市の狩人だった)。けれど、都市そのものが地名によって綴られた巨大な書物であり、逆にまた、書物の中にも都市は存在しているのではなかろうか。何よりもまず、言葉や写真だけが発見させる都市のイメージが、街路の肌理が、彷徨う狩人の身体技法がある。これらの「書物という都市」をくぐり抜けた時、読者は狩人の自覚と発見術を身につけて、町へと帰ることができるに違いない。そしてそのとき見慣れた街は、未知の異境に変わっていることだろう。
【田中 純】
●田中 純さんプロフィール
1960年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科准教授。
専門は表象文化論(イメージ分析)、ドイツ研究(現代ドイツの文化・芸術)。
著書に『
ミース・ファン・デル・ローエの戦場
』(彰国社)、『
残像のなかの建築
』(未來社)、『
都市表象分析I
』(INAX出版)、『
アビ・ヴァールブルク 記憶の迷宮
』(青土社、サントリー学芸賞受賞)、『
死者たちの都市へ
』(青土社)。最新刊に『
都市の詩学
』(東京大学出版会)。
●田中 純さんの本
■
『
死者たちの都市へ
』
田中 純【著】
青土社(2004-06-10出版)
ISBN:9784791761210
■
『
アビ・ヴァールブルク 記憶の迷宮
』
田中 純【著】
青土社(2001-10-30出版)
ISBN:9784791759187
■
『
ミース・ファン・デル・ローエの戦場―その時代と建築をめぐって
』
田中 純【著】
彰国社(2000-10-10出版)
ISBN:9784395005802
■
『
都市表象分析〈1〉
』
田中 純【著】
INAX出版(2000-04-20出版)
ISBN:9784872750935
■
『
磯崎新の革命遊戯
』
磯崎 新【監修】、田中 純【編】
TOTO出版(1996-12-10出版)
ISBN:9784887061453
■
『
残像のなかの建築―モダニズムの〈終わり〉に
』
田中 純【著】
未来社(1995-07-10出版)
ISBN:9784624710682
●新刊紹介
■
『
都市の詩学―場所の記憶と徴候
』
田中 純【著】
東京大学出版会(2007-11出版)
ISBN:9784130101066
過去の記憶と未来の徴候とが揺曳している場所としての都市。都市こそが可能にしてきた想像力の経験の根拠を問う都市表象分析。都市論、建築論、神話、詩、小説等のテクストや絵画、写真、映画のイメージを対象に、表象文化論の一つの結実を提示する。
●PR
■
『
SITE ZERO/ZERO SITE
』 No.1
責任編集:田中純|メディア・デザイン研究所
特集:〈病〉の思想/思想の〈病〉
病に寄り添う思想家たちにとって、「病」は「比喩」ではない。近代哲学における2つの主要な態度である自然科学とロマン主義のどちらにも偏重する事のない、来るべきアプローチ方法の模索。
http://site-zero.net/about/
■場所
紀伊國屋書店新宿本店 5Fカウンター前
■会期
2007年11月21日(水)〜12月20日(木)
■お問合せ
紀伊國屋書店新宿本店
03-3354-0131
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