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書物復権2010年共同復刊

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書物復権によせて

 今年の復刊書目が決まりました。例年より倍近くの候補書目をお示ししました。数多くのリクエストをいただきました。励まされます、大変にありがとうございました。この「厳しい」時代に、文字通り読者の声に支えられ、共同復刊も第14回となります。

 「厳しい」時代には、「原点にかえろう」、そう言われ、言ったりします。「書物」の原点、考えると大変、慌てて書物論を読む。しかも「復権」! となると、どのあたりに帰ればよいのか…。思うに、「読む(人)」より「書く(人)」の時代だ、と言われて久しく、ネット空間の広がりで、質量ともにさらに書く&読むは変動し、「軽く」なっているようです。名著は名著だから(名著→古典と置き換え可)、通過しなくてはだめだ、力にならないんだ、と「重み」を脅迫することは、今や無意味でしょう(たぶん昔だって)。

 脅かされるのはまっぴらですが、「おそれる」ことは、あってもいいのではないか、と思います。書くことのおそれ、読むことのおそれ。何か書こうとすると、自分の中に、どれだけ読み、考え、他者(=本)と応酬しえたか、が、とても強く迫ってくる。のみこまれそうだけれど、読む&書くことでしか、そのおそれに立ち向かえない。

 書くということはどれだけ(たとえば塩1トン分も)読んできたか、に直結しているのではないか、と思いますし、なかでも名著とは、書き手のそんな体験を「本」という世界のなかに投げ込んだもので、それが読者に感じ取られ、次の読者に伝えられたことの呼び名ではないか、と考えたいのです。おそれは、敬意になってつながっていく。

 いま、日常勤めている東京・神保町は、本の街です。読まれることで、本のなかの世界、本という世界が、複数化し多様に響き合うワンダーランドです。モノとしての本をつくり、はこび、手に取れる状態にする、このプロセスがあつまってくる街にも、おそれを持っていいかもしれません。このおそれは、いそがしく効率を求める現代に対する抵抗への招待になればいいな、とも願います。本は、時間を遅くしてくれる。時間の進み方が一つではないことを教えてくれる。出来上がるまでに、そして本屋さんに入るまでに、時間がかかる。「過去」に発せられた声がモノの形をとって自分を呼び、頁を手でめくっていくと、現在に過去が重なり、未来をかいまみさせてくれる。

 出会いそこねたモノとしての本、出会いは難しくなる一方、(たとえば復刊でも)会うことができると、かつて読んだ人の時間と、今の自分の時間が呼応するかのように、思いを巡らしうる。自分の体も時間も有限なのに、本が、その限界を揺さぶってくれる。

 こんなふうに書きつつ、今日もまた、街で本に会えそうだ、そう思えてきた私は、次の「読む」という原点に戻れそうです。不明瞭な独り言になったお詫びもこめて、手にとっていただきたい1冊を紹介させてください。『身体としての書物』。偶然の出会いというプレゼントが常備されている、街の本屋さんで出会っていただけることも願いつつ。

【ごあいさつ】
 2010年、〈書物復権〉共同復刊、復刊の候補書籍に多数のリクエストをいただきありがとうございました。復刊候補書籍138点のうちから、インターネットやハガキでの希望を受けて復刊が実現する書籍は41点41冊。リクエストをいただいた皆さまには深く感謝いたしますとともに、今回見送られた書籍に対しての強い要望も各発行出版社はたいせつに受け止めております。何らかの機会を得て復刊が実現できるよう最善の努力をしてまいりますので、この後もご支持をいただけますようお願いいたします。
 今回決定した復刊書は5月下旬より、全国約200の協力書店の店頭にて展示されます。再度よみがえった各分野の基本図書、ぜひこの機に手にとってお求めいただけますようお願いいたします。また、下記の《東京国際ブックフェア》会場内〈書物復権〉共同ブースにても展示を予定しています。

【ご案内】
1. 刊行は2010年5月下旬を予定しています。
2. いずれも少部数の発行です。品切れの場合はご容赦ください。
3. 内容についてのお問い合わせは各発行出版社へお願いします。
4. 共同復刊とは別に、各社が独自に復刊を予定している場合があります。発行出版社にお問い合わせください。

【読者からのメッセージ】
懐古趣味ではなく、現在でも常に参照を求められる書物の積極的な復刊を望みます。(35歳・男・教員)
「本は、私の思想や人格を形成してきたものの形そのもの」だと考えています。学生時代はお金がなかったので、図書館で本を読むことだけで満足していましたが、社会人になってお金が自由に使えるようになってから、「自分」というものが形成されていく過程を物でも残しておきたいと思うようになりました。(23歳・女)
正直申しあげて、ここ数年の本企画では同じ書籍がくりかえしリストに入っているようなこともあって、食指を動かされず、この企画ですらもはやこれまでかとも思っていましたが、今回は期待できそうです。(男)
やっぱり紙媒体じゃなきゃ本じゃない。出版業界厳しいでしょうががんばってください。古本屋巡りも楽しいですが、魅力ある新刊本を望みます。(24歳・女・大学院生)
分冊・ソフトカバーでの復刊を希望。オリジナルの1冊本のままだと重いので不便。復刊の場合は「学術書はハードカバー」にこだわらないほうがいいと思います。(46歳・男)
図書館にしかない。手元において書き込みをするほどに利用したい。(74歳・男)
今、氾濫している様々な本にある考え方には、いずれも原点がある。タイトルに翻弄され、様々な本を濫読するよりも、一つの大家の本を基本書として手元におきたいため。(47歳・男・公務員)
紀伊國屋のインターネットで注文しようとしても、入手不可がものすごくたくさんあり、そのなかに復刻してほしいものがたくさんあります。多少、本代が高くなっても、復刻してくださるようなシステムがほしいです。(52歳・女・公務員)
いたしかたないとはいえ、予価の高さに投票を見送った書籍が何点もあります。「復刊文庫」的なことは考えられないのでしょうか。(28歳・男)

東京国際ブックフェアのご案内
 2010年7月8日(木)〜7月11日(日)まで、東京有明の東京ビッグサイトで開催される東京国際ブックフェアに、〈書物復権〉参加出版社が共同出展します。各出版社の刊行書が一堂に勢揃い、ぜひ皆さまの7月の予定に組み込んでいただければ幸いです。

詳細はhttp://www.bookfair.jp/でご覧ください。

書物復権参加出版社
■岩波書店
〒101-8002
千代田区一ツ橋2-5-5
TEL 03-5210-4112
■東京大学出版会
〒113-8654
文京区本郷7-3-1
TEL 03-3811-8814

■白水社
〒101-0052
千代田区神田小川町3-24
TEL 03-3291-7811
■法政大学出版局
〒102-0073
千代田区九段北3-2-7
TEL 03-5214-5540
■紀伊國屋書店
〒153-8504
目黒区下目黒3−7−10
TEL 03-6910-0519
■みすず書房
〒113-0033
文京区本郷5-32-21
TEL 03-3814-0131
■勁草書房
〒112-0005
文京区水道2-1-1
TEL 03-3814-6861
■未來社
〒112-0002
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