チャップリンとヒトラー メディアとイメージの世界大戦

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チャップリンとヒトラー メディアとイメージの世界大戦

  • 著者名:大野裕之
  • 価格 ¥2,530(本体¥2,300)
  • 岩波書店(2023/11発売)
  • ポイント 23pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784000238861

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内容説明

20世紀に最も愛された男チャップリンと最も憎まれた男ヒトラーは,わずか4日違いで生まれ,同じちょび髭がシンボルとなった.二人の才能,それぞれが背負う歴史・思想は,巨大なうねりとなって激突する.知られざる資料を駆使し,映画『独裁者』をめぐるメディア戦争の実相,現代に連なるメディア社会の課題を,スリリングに描き出す.

目次

プロローグ 四日違いの光と影
『独裁者』ストーリー
凡例
第一章 チャップリンの髭,ヒトラーの髭
二人の天才の誕生 チャップリンと第一次世界大戦 自由公債キャンペーン 『担へ銃』――史上初の厭戦映画 ヒトラーの髭はチャップリンのまねか
第二章 ヒトラーの台頭とチャップリン攻撃
世界メディアの誕生,そしてベルリン来訪 天才演説家の誕生と反ユダヤ主義の伸張 「チャップリン=ユダヤ」攻撃の開始 二人の運命を変えたトーキー ベルリン再訪――ナチスとチャップリンの初の直接対決 「愛国心は狂気だ」 第三帝国の映画統制――チャップリンの全面禁止 ナチスの嫌がらせ訴訟 世界に広がった「チョビ髭比べ」
第三章 「チャップリンのナポレオン」――幻の反〈独裁者〉プロジェクト
ナポレオン映画化プロジェクトの始まり ナポレオンと身代わりの「一人二役」 脚本完成――反戦の思いをこめて 『モダン・タイムス』公開と「ナポレオン」への迷い 断念
第四章 「プロダクション♯6」――『独裁者』製作準備
『独裁者』製作のきっかけ アイディア熟成とストーリー構成作業 強制収容所の実態を予言 ヒンケルとナパローニ――二人の独裁者の原型 最初のストーリー構成 『独裁者』製作の噂とナチスの妨害 スタジオ準備期へ ヒンケルの妻 兄シドニーと弟ウィーラー 脚本完成 ヒトラーの反応とドイツ,イタリア,そしてイギリスからの圧力 本国アメリカでの逆風 第二次世界大戦開戦の報せ
第五章 開戦,そして撮影開始
白熱する撮影 ヒンケルに変貌したチャップリン 地球儀のダンス 「小型飛行船」とジャック・オーキーの参加 本撮影終了 長期化する戦争,長期化する製作
第六章 演 説
カットされた「踊る兵士たち」 ラストシーンの最初の構成 「演説のアイディア」 撮影台本における演説シーン ヒトラーの進撃とチャップリンの孤独な闘い ヒトラーのパリ入城の翌日に演説の撮影 逆風から待望へと変わった世論
第七章 完成――作品分析,公開とその衝撃
チャーリーの道のり 『独裁者』細見 サイレント/トーキー映画 「ユダヤ人映画」の枠を超えて 音楽映画,ダンス映画としての『独裁者』 「心理」その1 ゲットーの謀略 「心理」その2 ヒンケルとナパローニ ユナイトの宣伝作戦――子供たちは独裁者ごっこをしましょう! 公開の日 賛否入り混じったアメリカの批評 国を挙げて大絶賛したイギリス ドイツの反『独裁者』キャンペーン チャップリンとヒトラーの「世界大戦」 戦中の日本人と『独裁者』 ヒトラーは見たのか
第八章 『独裁者』というメディア
終わらなかった闘い 冷戦期のチャップリン――「平和の煽動者」の苦難 アメリカでのチャップリン再評価 日本公開と『独裁者』の現在 笑いという武器――戦時中の他の反ナチス映画との比較 ヒンケルのデタラメ演説を「翻訳」 フィルムには毒が入っている 永遠に「現在」を拓く,ラストの演説
エピローグ 「それが私たちの希望だ――」
『独裁者』結びの演説
謝辞
主要参考資料・文献

『独裁者』スタッフ・配役など
ヒンケルのデタラメ・ドイツ語解読
図 著作権・所蔵元・出典

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

鉄之助

330
「ヒトラーは小さな男」というイメージは、チャップリンの映画「独裁者」が生んだものだった。実際のヒトラーの身長は175センチ、晩年の体重は100キロを超え、決して「小男」ではなかった。チャップリンは「独裁者」の最後のシーン、6分間の演説を撮影するために、構想1年8か月、シナリオを1000回以上書き直した。結果、このシーンは「フィルムに焼き付けられた平和の祈り」として永遠に刻まれ、ヒトラーは世界から「笑い者」になる。誕生日がたった4日違い、この二人の”天才”を巡る壮大なドラマに圧倒された。2022/06/07

ベイス

109
ヒトラーについてはある程度の知識があった一方で、チャップリンについてはごく基本的なイメージしかなかった。そのためか、また著者がチャップリン研究家であるがゆえか、印象として両者を対等に論じた書ではない。ではなく、チャップリンの驚くべき感性や予見性、リアリティに裏打ちされたヒューマニズムともいうべき屈強な信念を、ヒトラーと対置することでより明確に証明した書だと感じた。特に冒頭とラストの「演説」を比較してこの作品が「時代」と「ストーリー」を超越したという結論は見事。『独裁者』以外の作品も見たくなること必定だろう2024/03/21

Bugsy Malone

84
チャップリンとヒトラーを光と影に見立てた論は今迄にも目にした事はある。しかし本書はヒトラー個人では無く、ナチス・ドイツを含めた各国とチャップリンとの闘いについて『独裁者』制作の過程を辿りながらメディアとイメージというものに焦点を当て説明している。ナチスの愚にもつかない嘲笑、アメリカ、イギリスの及び腰。そんな過酷な状況の中、チャップリンが笑いと魂を込め、こだわり抜いて完成させたメディアとしての『独裁者』。それはヒトラーに、ナチスに、戦争に勝利した。とても、とてもためになりました。2017/09/22

ykmmr (^_^)

67
昔から、僅か4日違いの誕生日。そしてどことなく似ていて、でも実は真逆みたいな2人の関係に興味を持っていた。2人とも、それぞれの分野での『天才』・『カリスマ』である事は間違いないなく、2人とも世の中の事をそれぞれで考えている事もその通りだが、お互いが対岸の思想であるが、その思想をお互いが矜持し、互い違いに刺激し合いながら、それぞれの人生の歴史を映像化し、後世に残した。残酷で悪者扱いされるヒトラーだって1人の人間。『天才』ならではの『覚悟』を持ち、自分のやり方の治世を作って行った。2021/09/17

おさむ

46
同い年で同じちょび髭。この2人が真正面からガチで「闘った」映画「独裁者」。その製作を巡る当時の世界情勢、度重なる圧力、脚本の変遷など内幕を詳細に検証した力作。メディアを使ったイメージ戦で最終的に勝利をおさめたのはチャップリンだった。いま私達が持つヒトラーのイメージは映画のヒンケルのイメージに他ならない。一方、忘れてはならないのは、戦後も根拠ないデマをでっち上げてメディアで叩くナチスのようなやり方が存在していること。いまのトランプ現象もまた同じように見えてなりません。2020/03/15

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