労働組合運動とはなにか - 絆のある働き方をもとめて

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労働組合運動とはなにか - 絆のある働き方をもとめて

  • 著者名:熊沢誠
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  • 岩波書店(2023/09発売)
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  • ISBN:9784000025966

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内容説明

社会には競争が溢れている.勝者たり得る者はごく一握りにすぎず,多くの人は敗者になることをまぬかれえない.敗者が「敗者」の立場のままでも生きていける社会は可能なのか――.ノンエリートがノンエリートの立場のままで生きていける社会を可能にする試みこそが労働組合運動だとする著者が,その真髄を語る.

目次

一章 労働組合原論──その思想、その機能、その多様なかたち
序にかえて
1 なぜ今、あらためて労働組合運動なのか
社会保障論から──「ワークフェア」にさきがけて
顕在化する格差社会への対抗
新自由主義の台頭と人びとのアトム化
2 労働組合の思想
競争の制御──〈平等を通じての保障〉
石田光男氏の労働組合論
個人主義と集団主義の位相
3 労働組合の基本的な機能
経済(学)的にみれば
政治(学)的にみれば
社会(学)的にみれば
労働組合に頼らない生活防衛について
4 さまざまの〈労働社会〉・それぞれの労働組合
〈労働社会〉の形成要因
定着のかたちと組合組織
二章 欧米労働組合運動の軌跡と達成
1 クラフトユニオンの世界
合同機械工組合の組織と政策体系
なぜそれが可能なのか
クラフトユニオンの変化
クラフトユニオニズムの遺産
2 一般組合(ジェネラルユニオン)の登場
「イーストエンドの覚醒」──ロンドン港のドックストライキ
港湾労働者の登録制──雇用の臨時性の克服
3 職場全員組織と産業別組合──ものがたり・アメリカ自動車産業の組織化
寡占企業のビヘイビアとマスプロダクション
専制的労務管理の支配
オープンショップ運動──アンチ・ユニオニズムの諸相
アメリカンドリームのゆくえ──大恐慌とニューディール政策
自動車産業組織化の成功要因
GMのシットダウン・ストライキ(一九三六~三七年)
シットダウン・ストライキの成果──諸要求の帰趨
4 労働組合運動と現代の労使関係
パターン・バーゲニング
セニョリティにもとづくレイオフと再雇用
労働組合運動の達成したもの
一九八〇年代以降の後退と再生
三章 企業別組合への道ゆき──近代化・現代化の日本的特徴と労働者
1 企業別組合への大まかなプロセス
2 日本近代化の特徴的な様相
近代国家統合のフレームワーク
労働力需要の質的ダイナミズム
農村分解のかたちと労働者像
産業民主主義の否認と「横断組合」の放逐
3 年功制度
その構成要素
その背景と労働者の受容
唯一の〈労働社会〉としての企業社会
ひとつの総括
4 戦後民主主義と労働者思想
建前を実態に!
国民としての平等
従業員としての平等
5 戦後労働組合運動の展開
労使関係の争点
時期区分の概観
第1期:年齢別賃金・自動昇給VS.ベース賃金・職階制賃金
第1期:電産争議(一九五二年)
第1期:職場の主導権のありか──日産争議
第1期:解雇反対闘争と企業別組合
第2期:春闘の展開
第2期:職能給への収斂
第2期:日本的能力主義の働き方
第2期:三池闘争という分水嶺
第3期:賃金決定の「里帰り」
第3期:公労協バッシング
第3期:非正規労働者の増加とコミュニティユニオン
第4期:春闘の形骸化
第4期:労働条件決定の〈個人処遇化〉
第4期:「希望退職」の虚実
第4期:非正規若者のワーキングプア化
四章 労働組合運動の存在は今どこに?
1 戦後労働組合運動が達成できなかったこと
企業の枠を超えた賃金の標準化は?
個人別賃金標準化の挫折
仕事と処遇におけるジェンダー差別は?
非正規労働者・非組合員の処遇規制は?
働き方への組合規制は?
2 非正規労働者にとっての企業別組合
企業別組合の立場──雇用形態をめぐって
非正規労働者の仕事内容をめぐって
非正規労働者の賃上げとナショナルセンター──社会的労働運動論の真偽
3 正社員(=組合員)にとっての企業別組合
「個人の受難」に寄り添わない労働組合
なぜそうなっているのか
組織労働者と労働組合の疎遠な関係
4 いくつかの重要な関連事項
「個別労働紛争機構」への訴え
労使協議による団体交渉の駆逐
徹底したスト離れ
政府と労働組合──いわゆる政策課題について
五章 労働組合=ユニオン運動の明日
1 労働組合のニーズをめぐる意識状況
閣議決定・二〇一〇年六月
労働組合の必要論と不必要論
若者と労働組合
女性労働者の立ち位置
2 企業の組合・職場の組合──その性格の二重性と労働者の選択
〈労働社会〉を労働組合(ユニオン)に媒介する要因
企業別組合にもできること
ノンエリート社員たちのニーズと職場組合主義
非正規労働者、パートタイマーの組織化
均等待遇の実践──いくつかの事例
3 中小企業労働者の連帯──支払能力の軛を絶って
企業横断の労働組合
「関西生コン」の独自性
港湾労働者と共同雇用
下からの公契約条例運動──行政関連ユニオンの試み
4 非正規労働者たちのユニオン
クラフトユニオンの可能性──ある女性の軌跡
いくつかのクラフトユニオン
コミュニティユニオンの役割
コミュニティユニオンの困難
むすびにかえて──政策課題を担う社会運動
あとがき
主要参考文献
本書の内容に関連する映画作品

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

きいち

21
組合に所属したこともないし正直「終わった制度」と思っていたが、派遣やブラック被害者の支援の現場でのユニオンのあてになりっぷりを身近に見聞きし、ここ最近労働組合観が大きく変わったところだったので読んでみた。とても力の入ったいい本。過去や海外の労働運動の端的な事例紹介を通じ、「あってもよかった今」や「ありうべき将来」の選択肢が立ち現れる。労働問題が「個人の問題」としてあらわれている現状に対し、「絆のある働き方」の実現が結局は近道、労働組合は確かにそのための有効な手段だ。◇関西生コンや港湾の事例は鮮烈だった。2013/05/13

壱萬弐仟縁

13
2011年は孤族元年(14頁)。単身世帯増加の一途。無援、無縁の社会問題。孤独死回避は、労組のような助け合いシステムなくしてひとりではできないことが多い人間。142ページからは非正規の組合が喫緊の課題とされる。労組法の支援も時代に合うようにする必要もある。学部時代に産業社会学を学んでいて出てきた著者だと想起。正規のような仕事でも非正規待遇。正規でも首切りされるアベノミクスの弊害。厳しい労働実態に、生存権を声高に。2013/06/13

富士さん

7
労働組合の理念、歴史、方法を分かりやすく通観した見事な入門書であると同時に、政治が変わればたちどころにうまくいくと唱える怪しげな魔法使いの秘密集会でも、経営者から下賜された利益を恭しく頂戴する労働貴族のクラブでもない、堅実で切実な日々の理不尽と闘うためのあるべき労働組合の在り方を明快に示した思想の書だと思いました。労働とは本来、生きるための営みすべてを言うべきだと思うので、生存を阻害するものへの闘いこそ労働と言い得ると思います。むしろ、死を強いる理不尽に逍遥として従うことこそ、怠惰と虚無を証している。2016/10/23

とくべい

6
本の帯にある「なぜ労働組合は嫌われるのか」は労組の活動に携わる者には衝撃的。嫌われているかどうかはともかく、圧倒的多数の若者から労働組合が縁遠い存在であることは事実だ。個人で加入できるローカルユニオンや職種別のクラフトユニオンの成長に著者は希望を見出しているが、著者も認めるように、日本型労働組合の最大の特徴である正社員中心の企業別組合という組織形態からの脱却抜きに、労組の再生はありえない。非正規や女性トから身近な存在になれるかどうか、ここに著者の言う産業民主主義の主役に組合がなれるかどうかが問われている。2013/10/31

どら猫さとっち

6
今忘れられているといえる労働組合運動。しかし、そんな現在だからこそ必要性があるのではないか。本書はそう問いかける。競争社会に働かせられ、人格すらないがしろにされていく。ブラック企業が蔓延し、働く能力も意欲も削がれる。安易に負け組にされてしまう今、それを救うのは、労働組合運動である。しかし労働組合は嫌われ、振り向きもしないのはなぜか。労働組合はそうであるにもかかわらず、なぜ必要なのか。また立ち起こすにはどうしたらいいか。貧困問題や働き方をも考える、渾身の“労働組合運動論”だ。2013/02/11

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