内容説明
民芸運動の創始者として知られる柳宗悦.その生涯は,政治経済的弱者やマイノリティに対する温かい眼差しで一貫している.それはどのような考えからきたのだろうか? それは,「世界は単色ではありえない」という確信に由来するのではないか.文化の多様性と互いの学び,非暴力を重視し続けた平和思想家としての柳を浮彫りにする.
目次
まえがき 柳宗悦を「民芸」から解き放つ
序章 いまなぜ柳思想に目を向けるのか
暴力連鎖におおわれる現代世界
「弱者」の台頭・「強者」の応戦
秩序の維持と不平等の是正
歴史の進行方向を見定める
世界を一色にしない
人間関係のあり方への示唆
柳研究隆盛の背景と傾向
韓国・日本の近年の研究動向
第1章 生涯の素描
父・柳楢悦と母・勝子
学習院に学ぶ
『白樺』に参加
中島兼子との出会いと結婚
アカデミズムから離れる
ブレイクというテーマ
宗教哲学者として
朝鮮問題とかかわる
平和思想を育む
朝鮮とのかかわりから民芸へ
ギルドの結成
欧米への旅
民芸運動を軌道にのせる
戦時下の課題
仏教美学樹立への挑戦
第2章 相互扶助思想の受容と民芸の位置
クロポトキンの相互扶助思想
ダーウィニズムに抗して
危険視されたクロポトキン思想
有島武郎の影響
白樺派とアナキスト
相互扶助への強い関心
理想は自由連合社会
「二元の問題」への視点
相互扶助をブレイク思想で深める
東洋と西洋の相互扶助
民芸の発見
日本文化の個性を求めて
他力をへて不二の境地へ
個人作家と工人の相互扶助
工人の個人作家志向を戒める
「弱者」が独自性を発揮するために
第3章 朝鮮への想い
実践思想家の誕生
朝鮮との接点
大杉栄と白樺派
植民地主義を冷やかにみる
浅川伯教・巧兄弟と出会う
三・一独立運動の衝撃
植民地支配政策への批判
朝鮮で兼子の音楽会を開催
「朝鮮の友に贈る書」
光化門「破壊」反対
朝鮮民族美術館の開設
朝鮮人との交流
「偉大な美」と主体性の尊重
日本人の経済活動への批判
民族文化はひとつの生命
なぜ「悲哀の美」と表現したか
朝鮮人の立場に視点を転換
独立運動への姿勢
暴力連鎖を断ち切らねば……
文化という非暴力的手段を駆使して
第4章 独自の平和思想の形成
トルストイ思想との出会い
徴兵忌避
白樺派と第一次世界大戦
ロバートソン スコットとの論争
スコットに対する柳の反論
パッシヴ・レジスタンス
ラッセルに学び考えを深める
自国の政策から距離を置いて
絶対平和主義
ガンディーの非暴力不服従運動への共鳴
「複合の美」の平和思想
「英文日記」から
植民地での武力行使は大国間の戦争と同等
他の民族から学ぶ
異なる立場の者の視点で
「複合の美」という観点の定着
じかに見る眼
第5章 「周辺」文化へのまなざし
沖縄言語論争
日本の言語政策と沖縄の人々の意識
自文化に自信と誇りを
バイリンガリズムの観点
沖縄の人々の反発
沖縄を日本の中心に
東北は日本の文化的財産
東北の民芸
地方文化を大切に
アイヌを師として学ぶ
アイヌ文化の独自性を尊重
台湾人の能力を賞賛
文化の基盤は地方にある
戦時下の試練
国策としての地方文化運動のもとで
具体的な物で自文化を示す
第6章 開かれた宗教観
キリスト教から出発
科学を否定しない宗教
神秘道研究を通じ禅と出会う
他力にひかれる
浄土真宗への積極的関心
「信」と「美」の一致を木喰仏にみる
文化国家日本確立への悲願
「美の宗教」運動に示される実践的宗教
「美の法門」へ
無銘であってもなくても
一遍上人と妙好人の研究
到達点としての無対辞思想
個性重視から普遍へ
異質なものに学ぶ
終章 柳思想の何を継承するのか
「複合の美」の観点から見る現代世界
各々の持ち味を活かした方法で
多彩な世界の大切さ
世界が一色で幸せか?
先入観なくじかに見る
自己中心主義の克服
自文化を活かした平和論の可能性
柔軟な伝統文化観
積極的な力としての非暴力
現代日本への示唆
あとがき
主要参考文献
略年表
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