内容説明
「外務省記録」はじめ一次史料の公文書を駆使し、不平等条約のもと国家の体面の保持に腐心する日本の取り組みを体系的に解明する。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
省事
3
幕末から19世紀末の条約改正交渉が進展した時期にかけて、日本政府が自国民の海外渡航をどのように管理しようとしたか、それが当時の政府の重要外交課題だった条約改正とどのように相互作用を生じたかを明らかにした研究である。日本政府は外国に渡った日本人が現地で困窮する、あるいは賎業に従事することで日本のイメージを悪化させることに、「国家の体面」という観点から並々ならぬ関心を寄せた。移住者の振る舞いが対日感情を悪化させれば、不平等条約の改正に悪影響に悪影響を及ぼすと信じていたからである。2022/12/16
志村真幸
0
幕末から明治初期の約20年間を対象として、アメリカへの移民に関わる法的・外交的な側面を詳しくたどった研究書だ。 主として、軽業師、鉱山などの契約労働者、売春婦といったひとびとを扱っている。 彼ら彼女らのアメリカ入国には、黄禍問題がさかんだった時期でもあり、アメリカ側でも日本側でも摩擦を引き起こした。その際に日本政府がどのように対応したのかが、細かに追跡されている。あくまでも政治・外交レベルの分析であり、社会史的な側面には踏みこんでいない。 堅実な研究だ。 2023/02/27