岩波現代文庫<br> 貧困と飢饉

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岩波現代文庫
貧困と飢饉

  • 著者名:アマルティア・セン/黒崎卓/山崎幸治
  • 価格 ¥1,694(本体¥1,540)
  • 岩波書店(2023/02発売)
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  • ISBN:9784006003661

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内容説明

20世紀に世界各地で発生した「大飢饉」の原因は,一国レベルの食料総供給量の不足であるという通説を否定し,人々が十分な食料を手に入れる権原(能力と資格)が損なわれた結果であるということを実証的に解明.開発経済学に新たな地平を切り開き,後の「不平等理論」にも影響を与えた画期的な書.1998年ノーベル経済学賞受賞.

目次

訳者まえがき
まえがき
第一章 貧困と権原
1 権原と所有
2 交換権原
3 生産様式
4 社会保障と雇用権原
5 食料供給と飢餓
第二章 貧困の概念
1 貧困の概念に必要なもの
2 生物学的アプローチ
3 不平等アプローチ
4 相対的 奪
5 価値判断?
6 政策上の定義?
7 基準と集計
8 結 語
第三章 貧困――特定と集計
1 財と特性
2 直接法か所得法か
3 家族規模と同等成人
4 貧困ギャップと相対的 奪
5 標準的指標の批判
6 貧困指標の公準的導出とその変形
第四章 飢餓と飢饉
1 飢 饉
2 期間のとり方による違い
3 集団ごとの違い
第五章 権原アプローチ
1 賦存量と交換
2 飢餓と権原の失敗
3 権原アプローチの限界
4 直接的権原の失敗と交易権原の失敗
第六章 ベンガル大飢饉
1 概 略
2 食料供給の危機か?
3 交換権原
4 困窮化の階層的基盤
5 交換権原の極端な変化の原因
6 政策の失敗における理論の役割
第七章 エチオピア飢饉
1 一九七二~七四年の飢饉
2 食料供給量
3 ウォロ――輸送の制約か,権原の制約か?
4 生活困窮者たちの経済的背景
5 農民の貧窮と権原
6 牧畜権原と遊牧民
7 結 語
第八章 サヘル地域の旱魃と飢饉
1 サヘル地域,旱魃,そして飢饉
2 FAD 対 権原
3 困窮と権原
4 政策上の諸問題
第九章 バングラデシュ飢饉
1 洪水と飢饉
2 食料輸入と政府備蓄
3 食料総供給量の減少?
4 被災者の職業分布と困窮化の度合い
5 労働力の交換権原
6 焦点に関する疑問
第一〇章 権原と 奪
1 食料と権原
2 貧困層――正当な範疇?
3 世界の食料供給と飢餓
4 市場と食料の移動
5 権原の失敗としての飢饉
講演 飢餓撲滅のための公共行動
訳者解説
参考文献
事項索引
人名索引

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ばんだねいっぺい

26
ピュアすぎるかもしれないが、飢饉が 食料の総供給量を直接の起因としないのは、ショックだった。権原アプローチは、目から鱗で、交換権原の拡充を目的とした公的施策の展開が望まれる。2023/10/24

しんすけ

19
貧困と飢饉の要因を追求していると云えるだろう。ただし結論らしきものは示されていない。 しかし全体に繰り返されるのが、絶対的な物資不足が存在しないという主張と観える。 多くの飢饉の例が取り上げれ、そこには悲惨な餓死があったことも資料を持って語られる。 だがそこにも統計的な視点を取り入れると、全体的な物資不足は存在しないことが解る。だが実体は物資の不均等な配分であり、そこに貧困が顕在化する。 なぜ不均等が起こるのか解答も書かれていないが、センは資本主義の仕組自体が問題だと考えているのではないだろうか。 2024/04/17

CCC

12
飢饉は不作などからくる食糧不足から起こるわけではなく、貧困層の購買力不足と政府の無策からくる、ということを、主にアフリカやインド近辺のデータから示している。いろいろ実例もあるが、注釈にあった、食料が買えず店の前で餓死していった金のない原住民を見て、目の前に小麦があるのに食習慣を変えようとしなかったせいでこうなった、こうした人には食料よりもまず教育が必要なのだ、と述べた詩人の話が特に印象深かった。2019/04/26

isao_key

11
貧困と飢饉について、深刻な飢餓が生じていない時すら、貧困は存在しうるし、極貧とみなせることもあり得る。一方、飢餓は貧困を意味する。飢餓の特徴である絶対的剥奪は、相対的剥奪という観点から何が言えるかに関わりなく、貧困と診断されるのに十二分だからである。慢性的貧困は、災害としてはさほど過酷なものではないがより根深く、より多くの人々に影響を与える。飢餓が餓死と伝染病により何百万人もの犠牲をもたらすとすれば、慢性的貧困は衰弱と病気が死亡率を増加させ、人々の寿命を短くすることで‘何億人もの人々に苦境をもたらす。2019/06/30

富士さん

8
本書のテーマはただ一つ、飢饉というのは食べ物がないから起こるのではない、食べ物を手に入れる権利が認められないから起こるのだ、というにつきます。当然それはお金の有無でもありますが、それだけではなく、もっと根源的な、「それをやっていい」と認められているかという、社会的な正当性に関わる問題です。人の極限状態とは、社会的な認識の完全崩壊ではなく、その在り方の変化なのだと考えられるという意味で、とても社会学的でもありました。個人的には、戦争での死の分配などにも通じる魅力的で普遍性を感じる切り口であるように思います。2022/10/23

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