内容説明
ヒトが欲情するのは,そうさせる「文化装置」があるから――.援助交際・婚活殺人・「こじらせ女子」など時代ごとの性風景や,春画・写真・オブジェなど古今東西のアートから,発情を強いる「エロスのシナリオ」を大胆に読みとく.性からタブー・虚飾を剥ぎとり,アラレもない姿を堂々と示す,迫力のセクシュアリティ論.
目次
I おまんこがいっぱい
おまんこがいっぱい
セクシュアリティの地殻変動が起きている
もうひとりの毒婦
こじらせ女子の当事者研究 雨宮まみ『女子をこじらせて』文庫版のための解説
II 性愛・この非対称的なもの
裸体の記号学 裸体の文化コードを読む
視線の政治学
オナニストの宿命
「セックスというお仕事」の困惑
想像を絶する大人たちの抑圧
III 〈対〉という病
恋愛病の時代
恋愛テクノロジー
「恋愛」の誕生と挫折 北村透谷をめぐって
ベッドの中の戦場
〈対〉幻想を超えて
IV 〈対〉という実験
ジェンダーレス・ワールドの〈愛〉の実験 少年愛マンガをめぐって
究極の〈対〉
V グッバイ・ダディ
フロイトの間違い
DADDY?S GIRL
存在する権利
参考文献
初版あとがき
自著解題
初出一覧
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
美登利
71
第1章を読んで驚き、つい借りてしまったのですがその文章が書かれたのは1988年です。ジェンダー論者でもある上野さんの本を何冊か読んだ事があり、面白いおばさんだなと思っていました。岩波文庫だからか、軽い文章なのは本当に初めの部分だけ。興味のあるところは割と真剣に読みましたが、他は流し読み。今まで上野さんが色々な雑誌などに発表し関わってきたものを纏めた本だそうです。セクシュアリティー論、性に関する古今東西の色々な思想を研究したり、持論を述べたり。少女漫画家「花の24年組」さん方の漫画の解釈がふむふむでした。2016/01/23
Kikuyo
21
自分が持っている固定観念に、気づく機会はなかなか無い。それを自分で選んでいる、或は思い込まされているという自覚もあまりない。性に対する知識や概念はまさにそれの典型。フロイトに関しては鵜呑みにしているところがおおいにあった。1度根底から考え直す必要があるのもこの分野だ。「性をとくべつに理想化することもないかわりに、嫌悪することもありません」切れ味のいいナイフでスパっとさばいていくような文章は読みごたえがあった。2016/03/12
kenitirokikuti
10
本書を昨年に図書館で借りたときは少年愛マンガを扱った後半の章が目当てだったようだ。今回は前半を読んだ▲性の商品化と、性に関する男女の非対称と、むかし馴染みの概念が登場する。でもさー、いま40過ぎになってみると、おれの親父の年齢を当てはめるとこれからバブルかよ。車買い替えたり借家から持ち家になったり、息子をやや学費の張る学校に進ませたりできたのかよ。しらけちゃうな。経済成長による脂身を削ぎ落としたらごく平凡な田舎からの上京者のライフサイクルに過ぎないなぁ。想定外だったのはむやみな長寿化ぐらい。2018/04/30
sansirou
7
いきなり最初のタイトルで度肝を抜かれた。少女マンガのところは、なんだかよくわからなかったけれど、いろいろ考えさせられるね。2021/03/05
kenitirokikuti
7
「ジェンダーレス・ワールドの〈愛〉の実験 ー少年愛マンガをめぐってー」。自作解説によれば、編集者 藤本由香里が書かせたもの。藤本は『ニュー・フェミニズム・レビュー』第3号の責任編集(筆名は、白藤花夜子)。二十四年組の代表作中心の取り上げ方、もう歴史を感じるなぁ。2017/07/09