岩波新書<br> 尊厳 - その歴史と意味

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岩波新書
尊厳 - その歴史と意味

  • ISBN:9784004318705

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内容説明

「尊厳」は人権言説の中心にある哲学的な難問だ.概念分析の導入として西洋古典の歴史に分け入り,カント哲学やカトリック思想などの規範的な考察の中に,実際に尊厳が問われた独仏や米国の判決などの事実を招き入れる.なぜ捕虜を辱めてはいけないのか.なぜ死者を敬うのか.尊厳と義務をめぐる現代の啓蒙書が示す道とは.

目次

日本語版への序文┴序┴第一章 「空っぽ頭の道徳家たちの合い言葉」┴一 たわごと?┴二 キケロとそれ以降┴三 カント┴四 優美と尊厳┴五 尊厳と平等┴六 ヒエラルキー┴七 権利を敬うことと、敬われる権利┴第二章 尊厳の法制化┴一 尊厳ある小びと┴二 ドイツ┴三 カント的な背景 人間性の定式┴四 カトリック思想とドイツ連邦共和国基本法┴五 ドイツ連邦共和国基本法を解釈する┴六 ダシュナー事件と航空安全法┴七 一貫した解釈はあるか┴八 主意主義┴九 結論┴第三章 人間性に対する義務┴一 人間主義┴二 功利主義者の応答┴三 外在主義┴四 人間ではないものが、内在的に善きものであるかもしれない┴五 義務┴六 カント┴七 プラトン主義なき義務┴原注┴訳者あとがき┴キーワード

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

フム

35
尊厳とは何か、わかったような気でいたが、実は哲学的用語としては解釈がわかれる言葉だと言う。本書は政治哲学者である著者が、西洋における尊厳という言葉の歴史を辿りつつその意味を解き明かした。第二次大戦とジェノサイドの惨劇によって、戦後のドイツ憲法には、「人間の尊厳は不可侵である」が基本原理として掲げられた。人間の尊厳は国際法や各国憲法の鍵となる概念となったのだ。だが、現状では妊娠中絶の是非や尊厳死の論争など、生々しい対立がある。この状況に向き合うためにも「尊厳」という言葉を理解することは有意義と感じた。2021/06/09

テツ

16
自他の尊厳は大切である、大切にしなければならないというふんわりとした共通認識はあるけれど、明確に言語化しろと言われたら戸惑ってしまう『尊厳』という概念について。第二次大戦によりユダヤ人の尊厳(と膨大な生命)を奪った反省から生まれたドイツ基本法と国連の理念には組み込まれているけれど、それから百年経過したって大多数の人間にはピンとこないというのが現実だよな。ぼくの&あなたの尊厳という考えかたの発生と成熟。歴史的な扱われ方を知ることができた。カントが根っこに存在しているんだな。2024/04/04

プロメテ

12
私たちのうちなる道徳法が有する固有の価値。カントにとりそれは私たちの間にある自他ともに認識の根幹にある指標だった。それは普遍的には平等であるが、現世界内的に平等というわけではない。その認識を有さないものには、どのように自他を尊厳として見ることができるのかがわからないだろう。尊厳とは自他への敬意であるが、それが了解し合わないとならないがその認識が、高いものもいるし、低いものもいる。高いものには、大悲が、低いものには、反逆の不可能の様態が。終末とは低さ、尊厳の認識を有さない事態からの、平等の権利主張であった。2024/03/18

buuupuuu

8
論旨を上手く捉えることができず苦戦した。歴史を通覧して「尊厳」の多義性を確認し、現代の混乱状況においてその多義性がいかに現れているかを具体例によって見る。問題は「内在的な価値」という現代的な尊厳の概念が、人権について何を含意しているか曖昧なことだという。3章では遺体への冒涜というケースをてこにして「義務としての敬意」という考えの下に尊厳を捉えなおそうとする。よく分からなかったのは、これが2章への応答として意図されているのかどうかということ。2021/05/02

かみかみ

6
世界人権宣言やドイツ連邦共和国基本法に謳われる「尊厳」という語が、歴史上あるいは法制上扱われてきた経緯を検証する。もともとカトリックの聖職者や神学者が使うことが多かった「尊厳」はカント哲学を経て「人権」と似たように身分の高い少数の者から、地域を問わず多数の者に適用されるようになった概念であることがわかる。冒頭では用法は異なっても時代や西洋東洋を問わず使われる概念であることを強調していたが、検証した事例が西洋に偏っていたのはやや期待外れだったが。2021/09/21

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