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内容説明
祖国の内戦を逃れ来日した女子高校生が若き能楽師と出会う.コンピュータサイエンスの博士号を捨て,閉ざされた伝統芸能の世界に入る彼女を待ち受けていた試練とは.能の魅力を妻兼マネージャーとして国内外に発信し再び世界を駆け巡る傍ら,子育てや母を日本に呼び寄せての介護に奔走する.異文化理解の架け橋となったある女性の記録.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
neimu
42
中学生位でも読めるような平易な日本語で書かれているので、異文化理解、伝統文化再考には良いきっかけになる本。肩肘張らずに読める岩波新書は珍しいので。まず、レバノンという国についてよく知らない。能楽については、並みの知識。一人の女性の半世紀といってしまえば、何だかありふれたものになってしまうが、そう感じさせない興味深い内容だ。更に母親の介護のことで日本とレバノンを行ったり来たり苦労する姿には身につまされるところ大で、しみじみしてしまった。国は違えど親は親、子は子。日本の大学院の欠点は今も変わらないと思う。2022/11/15
けんとまん1007
38
タイトルから想像していた内容と、いい意味で違う部分が多かった。日本の伝統芸能には疎いし、その中でも能楽には馴染みがない。そんな世界に縁があり、一員となった著者と、その家族や周囲の人達。ご本人たち能力や努力もあり、世界が広がって行くのは、読んでいて嬉しくなってくる。やはり、いいものは通じるのだ。2020/05/10
おかむら
38
同じ日本の伝統芸能でも、歌舞伎役者の家の方はワイドショーでもやったりするのでなんとなく知ってたりするけど、能楽師の家って全く知らないわー。しかも奥さんがレバノン人って。いったいどこでどうやって知り合って結婚するに至ったのか。どんな暮らしぶりなのか興味わくー。ってことで岩波新書だけど読んでみた。岩波新書なのに読みやすい。能楽はやはりハイソな芸術、日本よりむしろ海外の方がウケるのかもしれないなあ。子育てや介護についての話は興味深い。同じ国際結婚での子育てを書いたブレイディみかこの本と比べるのも楽しい。2020/02/16
崩紫サロメ
16
レバノンの内戦を逃れ、日本人と結婚した姉を頼って神戸で少女時代を過ごした著者。様々ないきさつを経て、能楽師梅若猶彦と結婚。伝統芸能の世界において、外国人であるから見えてくること、祖国レバノンの内戦の行方……非常に沢山の要素が絡み合っている。特に印象に残ったのが、夫妻の間に生まれたバイカルチュアルな娘と息子の成長。二人ともいろいろな困難にぶつかるが、柔軟に対応しながらたくましく成長していく。多文化共生について考えさせられる。2020/02/07
みなみ
12
Kindle Unlimited で読了。レバノンの紛争を逃れて日本に来た女性が能楽師と結婚する。彼女は能を内外に伝え、日本人とレバノン人の間に生まれた子どもたちの教育環境に苦心し、レバノンに住む実母の介護にも苦労する……まだ彼女の人生は続くが、この時点でもひとりの女性の壮大な一代記だ。海外にルーツを持つ子どもが日本の一般的な教育環境て苦労する様はわかりやすく想像できるがゆえに読んでいて辛い。よく乗り越えたと本当に思う。レバノン紛争にも能にも詳しくないが、読みやすい言葉で書かれており本当にいい本だった。2023/01/01