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内容説明
ソクラテスはなぜ毒杯を仰がねばならなかったか。この問いは、知を愛するとはどういうことか、人間はいかに生くべきかという問題につながっている。著者は、最新の研究にもとづき、ソクラテスの生活、その啓蒙思想、ダイモン、哲学を検討するとともに、アテナイの情報を明らかにすることにより、この問題に肉薄する。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
壱萬弐仟縁
20
古代ギリシアでは病弱な人が多かったが、ソクラテスは丈夫だったという(42頁)。彼は、富や名誉のほかに、人間が特に留意しなければならない、もっと大切なものがあることを語る。不知の知とか、無智の自覚とか(153頁)。金銭や名誉は、必ずしも人を幸福にするものではない。それらが人間の幸福に役立ち得るためには、すぐれた精神を必要とする(159頁)。そのすぐれた精神の中身は、何なのか、考えねばならない。空威張りすることではないはずだ。見せびらかしの消費(T.ヴェブレン)でもないはずだ。社会の為に富を還元することだ。2013/08/15
masawo
18
今まで読んだ哲学・思想ジャンルの新書の中では断トツのNo.1であり、出版から半世紀を経た今なお模範的な新書と言える。ソクラテスの生涯を丹念に検証しつつ彼の思想の核心に迫る。ダイモン→智→徳の流れるような解説が素晴らしい。「はしがき」にもあるようにプラトン対話篇の有名どころと併せて読むことで相乗効果が期待できる。2021/09/23
Ex libris 毒餃子
16
ソクラテスの人となりをプラトンにあまり依存せずに書き出した本。どちらかと言うと、古典文献学的傾向。2023/01/15
mstr_kk
15
名著との呼び声高い本ですが、お恥ずかしながら初読。非常に感動的でした。ソクラテスはなぜ死ななければならなかったのか、という謎を、資料検討と思考の両面から徹底的に問い詰める、スリリングな論考です。めちゃくちゃ面白い。いちいち問いが深くて的確で、思考の密度は高いのに、文章には難解なところがありません。圧倒的名人芸。ソクラテスは歴史と政治の中で哲学をしていたんだなあと、思いを馳せました。哲学を(哲学について)考える土台になるような本だと思います。もっと早く読んでいればよかった。2017/03/18
mstr_kk
12
先月読んだ本ですが、読書会での発表のために再読。前よりも明確に全体の構成を把握することができました。章タイトルを勝手につけ直すと、第1章「ソクラテスの死を歴史的事件としてとらえよう」、第2章「ソクラテスの生活的事実を調べるところからはじめる」、第3章「死の遠因(1)若いころからのよくない噂」、第4章「死の遠因(2)ダイモンの合図」、第5章「死の内的要因(1)デルポイの神託と知への愛」、第6章「死の内的要因(2)世間に逆らって徳を求める」、第7章「死の外的要因、および内的要因と外的要因の合致点」となります。2017/04/29