内容説明
現代思想を代表するマルクス主義理論家か,妻を殺めた狂気の人か.光と闇の落差がもたらす眩暈のなかに哲学者は姿をくらます.彼にとっては,「行方不明になる」ことが「政治」であった――知られざるアルチュセール(1918―90)の哲学が,「スピノザを読むアルチュセールを読む」というかつてない試みを通して浮かび上がる.
目次
目 次
第一章 行方不明者の生涯
一 理論と経験
二 落差と眩暈──青年期
三 二股をかける哲学者──壮年期
四 危機の炸裂──一九七〇年代以降
第二章 偶然性唯物論とスピノザ──問題の「凝固」
一 偶然性唯物論──晩年の思想?
二 構造とはなにか
三 「錯乱」と「狂気」
四 経験主義
第三章 『資本論を読む』またはスピノザを読む
一 アルチュセールのスピノザ
二 徴候的読解とはなにか
三 神の背中──哲学と宗教
四 「われわれ」は「狂って」いる
第四章 構造から〈私〉と国家へ
一 「錯乱」するアルチュセール
二 原因の劇場
三 「イデオロギーと国家のイデオロギー装置」再考
四 〈私〉と国家
第五章 スピノザから遠く離れて
一 『神学政治論』でも『政治論』でもなく
二 哲学、政治、歴史
三 起源、深淵、個人/狂人──フーコーと共闘する
四 国家の政治──フーコーと対立する
五 自伝という「政治」──「佐川くん」にならずピエール・リヴィエールになるために
本書において使用した文献
謝 辞
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
浅香山三郎
13
市田さんの本の中では、まだよく読めた方か。アルチュセールの哲学を「行方不明者の哲学」と捉へ、二股的な矛盾のもつ意味をその哲学の内部に読み込んでいく。しかし、読むには読んだが、すぐに忘れてしまふので、やはり繰り返し読むべき本なんだらうと思ふ。 フーコーの哲学との影響関係にかかる議論は面白かつた。2019/04/10
さえきかずひこ
13
ルイ・アルチュセールの偶然性唯物論を、スピノザ『知性改善論』を参照することで読み解いていくハイブラウな一冊。第4章で記述される幻覚としての白日夢/想像という概念は本書の中でも最も分かりやすく面白い(「想像力と感情の本源的基盤は幻覚と夢だ!!!」P.140)上に、生涯を通じて"行方不明"者であろうとしたアルチュセールの人物を考える上でも大いに役立つように構成されている。また、第5章での極めてハイコンテクストな議論にも現れるアルチュセールの愛弟子であるフーコーの思想をある程度掴んでいる方が理解が深まるだろう。2019/05/31
キョートマン
9
ムズくて消化不良、、、 いつか再読する日が来ることを信じて本棚へ2021/09/25
amanon
8
やっぱり、自分にはアルチュセール研究は無理だったんだな…改めてそんなことを思わされた。まがりなりにも哲学科の院で修士論文を書いたにもかかわらず、本書の半分も理解できず。だがそれと同時に非常にスリリングな内容だということは理解できた。そしてかつての自分が理解が覚束ない状態でありながらも、彼の著作に惹かれていた理由も何となし理解できた気がする。マルクス主義者でありながら、カトリック信仰を捨てなかったというその複雑な経緯や、ブレや矛盾が少なからずみられる論考に、なぜかいわく言い難い魅力を感じてしまったのだ。2018/11/16
どらがあんこ
6
私にとっては事故のような本でした。2019/05/10