岩波新書<br> マーティン・ルーサー・キング - 非暴力の闘士

個数:1
紙書籍版価格
¥902
  • 電子書籍
  • Reader

岩波新書
マーティン・ルーサー・キング - 非暴力の闘士

  • 著者名:黒崎真
  • 価格 ¥902(本体¥820)
  • 岩波書店(2018/06発売)
  • ポイント 8pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784004317111

ファイル: /

内容説明

リンチ,脅迫,放火,爆破.アメリカ南部社会を覆う,人種差別の凄まじい暴力.われわれ黒人はもう待てないのだ.人びとを直接行動による社会変革へと導いたキング牧師(1929─1968).栄光の前半生だけでなく,差別と貧困のないアメリカを夢見た彼の後半生こそ忘れてはならない.武器をとらず非暴力で闘い抜いた苛烈な生涯をえがく.

目次

目  次
   はじめに 旅の始まり

 第1章 非暴力に出会う
  第1節 牧師の家系に生まれて
   アトランタ/黒人教会/家族と「第二の家」/差別と格差の経験/牧師職を決意する
  第2節 研鑽を積む
   クローザー神学校/ガンディーの非暴力と出会う/ボストン大学神学部大学院/コレッタとの結婚/変化の兆し
  第3節 牧師として生きる
   黒人のキリスト教信仰/説教スタイルの伝統/デクスター教会
 第2章 非暴力を学ぶ
  第1節 バスボイコット運動
   ローザ・パークスの逮捕/ホールト・ストリート教会の演説/攻 防/コーヒーカップの上の祈り/ラスティンとスマイリー/ 『非暴力の力』/非暴力を生き方にする/変化と反動のなかで
  第2節 際限のない暴力
   マッシブ・レジスタンス/kkkによるテロ/南部の人種イデオロギー/容認される暴力/法案成立を阻むもの
  第3節 シンボルとしての葛藤
   高まる名声/sclcの創設/冷淡な連邦政府/we shall overcome/刺される/ガンディーの国へ/非暴力は通用しない/キングの反論
  第4節 ウィ・インシスト!
   シット・イン運動/非暴力ワークショップ/snccの創設/立ちはだかる障害/ケネディ兄弟/ 「第二の解放宣言」を/フリーダム・ライド
 第3章 「創造的少数派」の戦術
  第1節 苦杯を嘗める
   オールバニーからの電話/深入り/敗因と教訓/巨人が目を覚ます
  第2節 ドラマの創造
   バーミンガムに照準を合わせる/目標と戦略/誤 算/もう一つのオールバニーか/突破口/勝 利/ 「バーミンガムの獄中からの手紙」/非暴力か、それとも暴力か
  第3節 ワシントン行進
   公民権法の要請/仕事と自由のためのワシントン行進/ 「私には夢がある」/鳴り響く自由の鐘/新たな幕開け
  第4節 忍び寄る暗雲
   重なる悲劇/一九六四年公民権法/ノーベル平和賞/fbiによる脅迫/投票権法獲得に向けて
 第4章 非暴力に対する挑戦
  第1節 アラバマ・プロジェクト
   連邦政府は圧力なくして動かない/セルマ/ 「血の日曜日」/セルマ─モンゴメリー行進
  第2節 遠ざかる夢
   一九六五年投票権法/北部への関心/ゲットー/マルコムx/部分的接近/ワッツ暴動
  第3節 構造的人種差別の壁
   シカゴへ/シカゴ自由運動/苦肉の頂上合意/ 「柔術」の機能不全/試 練
 第5章 最後の一人になっても
  第1節 ブラック・パワーの挑戦
   snccの変質/メレディス行進での亀裂/チャント合戦/ホワイト・パワーの失敗/ブラック・パワーの評価/二つの戦術/唯一の声となる道を選ぶ/真の争点
  第2節 国家権力を敵にまわす
    「本質的に誤った戦争」/沈黙は裏切りである/反戦表明/非難の集中砲火/公民権諸団体の分裂
  第3節 貧者の行進
   人権の闘い/続く「長い暑い夏」/市民的不服従/ 「貧者の行進」計画/無数の障害/fbiによる弱体化工作/灯る希望
 第6章 「実現せざる夢」に生きる
  第1節 絶望の淵で
   黒人清掃労働者ストライキ/メンフィスへ/最悪の事態/孤立と孤独/最後の演説/一九六八年四月四日
  第2節 意志を引き継ぐ
   何がキングを殺したか/ 「最も小さい者」として/死の衝撃から/復活の街/バックラッシュ
  第3節 体制に取り込まれる
   キング国民祝日の制定/公的記憶の罠/晩年のキングを忘れてはならない/終わらない課題/ワシントン行進五〇周年
   読書案内
   キング略年譜
   おわりに 旅を受け継ぐ

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

さゆ@俳句集販売中

156
非暴力闘争をする人たちに共通することのひとつに、相手の良心への訴えがある。相手が1人ではその考えを変えることができなくても、集団であれば誰かしらは理解を示してくれるだろうという戦略に思える。そこで、メディアを使い幅広く宣伝し、少しずつイデオロギーを変革していこうというわけだ。それは、絶えず相手を信じ、自己犠牲を罪と捉えず使命とするほどの心がなければできないことである。2024/01/15

藤月はな(灯れ松明の火)

97
暗殺された公民権運動家としてしか知らなかったマルティン・ルーサー・キング。だけど、彼の考えはもっと奥深いものだった。マルコムXやブラック・パワー派とも対談していた懐の深さ。そして暗殺までの数年は中産階級だけでなく、貧困層にいる黒人にも真の自由と平等を叶えようとしていた彼。しかし、政治や人々の意識にまでも波及させようとさせた非暴力と真の平等の思想と活動が、政治的理由によって隣人への愛へと狭められてしまったという事実がとても切ない。巻末に参考文献だけでなく、音源資料や映画なども紹介されているのが有難いです。2018/06/14

まーくん

42
暗殺から50年。非暴力で人種差別に立ち向かったキング牧師の苦闘を辿る。公民権運動など、報道でおぼろげながら記憶にあるが、当時の南部社会を覆っていた凄まじい暴力に改めて戦慄する。60年代のアメリカにおいて、黒人の選挙権も識字テストなどの姑息な手段で制限されていたとは・・。公民権活動家としてだけではなく、後半生(といっても僅か39年の生涯)の貧困根絶への闘いをもっと評価するべきと著者は述べる。80年代、一人旅したアトランタ、まだまだ差別の空気が色濃く残っていた。"I Have a Dream."未だ成らず。2018/06/22

樋口佳之

38
キングの指導した非暴力直接行動は、対決的状況を生み出して事態を動かす、極めて戦闘的な行動である。/新たな知見のいくつかを取り入れている。「三つ組みの悪」に対するキングの認識はすでに大学院時代にできあがっていたこと、晩年のキングにむしろ焦点を当てる必要があること、公民権運動における非暴力を自衛との関係で捉え直すこと、公民権運動とブラック・パワー運動の連続性に着目すること、両者の運動を冷戦構造に位置づけて理解すること2018/10/18

skunk_c

29
キング牧師暗殺後50年にして著されたコンパクトで示唆に富んだ評伝。ワシントン大行進に象徴される、それこそ有名な「非暴力」で南部の人種差別と戦い、法的平等への道を勝ち取ったという、アメリカの「公式の評価」よりも、その後キング自身が悪戦苦闘した、人種的不正義、貧困、戦争の「三つ組の悪」の解消こそが、キングの目指したものだとする視点は重要。また、非暴力が如何に実践され、戦いの手段として機能したか、そして「自衛」という困難な矛盾をはらんでいたかが丁寧に語られる。シリアスな問題を穏やかな口調で語る文体も魅力的だ。2018/04/29

外部のウェブサイトに移動します

よろしければ下記URLをクリックしてください。

https://bookmeter.com/books/12723683
  • ご注意事項