内容説明
第二次世界大戦を起点とする福祉国家体制の形成,「英国病」とサッチャリズム,そして現在へ,戦後イギリスのあゆみを描く通史.政治・経済のみならず,国際関係や,階級・文化をめぐる社会変容にも着目し,多角的な現代史像を提示する.EU離脱に揺れるイギリスの〈いま〉を考えるためにも求められる,歴史的な思考軸.
目次
目 次
序章 現代史への視座
第一章 福祉国家の誕生──一九四〇年代
1 起点としての第二次世界大戦
2 一九四五年の精神
3 戦後再建
第二章 「豊かな社会」への変貌──一九五〇年代
1 コンセンサスの政治
2 帝国からヨーロッパへ
3 「豊かさ」の政治経済学
第三章 文化革命の時代──一九六〇年代
1 文化革命
2 近代化戦略
3 「衰退」と「進歩」のあいだで
第四章 「英国病」の実像──一九七〇年代
1 英国病
2 モラル・パニック
3 不満の冬
第五章 サッチャリズム──一九八〇─一九九〇年代
1 サッチャーの登場
2 サッチャーの勝利
3 サッチャーの退場
第六章 「第三の道」──一九九〇─二〇〇〇年代
1 中道政治の再編
2 第三の道
3 危機の時代
第七章 岐路に立つイギリス──二〇一〇年代
1 緊縮政策
2 レファレンダム
3 展 望
あとがき
年 表
参考文献
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
77
ヴィクトリア朝時代までの英国は知っているけど、それ以降の歴史的経緯を知るためにうって付けの新書。特に福祉や資本主義による自己責任主義の台頭による弊害は日本と重なる部分もあり、比較して読んでいました。ダンケルクでの撤退作戦で貴族、民衆が共に団結して戦況を乗り切った英国。しかし、ビートルズやツィッギーの輩出、ウーマンリヴ等によって華やいだ英国へ長きに渡る緩やかな分裂をもたらしたのがサッチャーリズムだった。『キングスマン』のエグジーの生活環境モデルとなったチャブやイラク派遣への弊害、スコットランドとの関係も言及2017/12/19
おさむ
33
大学生向けの講義がベースなので、とてもわかりやすい。最近の英国のイメージというと、映画「ダニエルブレイク」に描かれていた弱者に厳しい社会です。かつては揺り籠から墓場までと評価された社会保障制度も紆余曲折があったことを教えてくれます。サッチャーと安倍晋三の政策がかなり重なることや、1970年代にすでにLGBTを認める先進性があったことなど、頭の体操になりました。ブレグジットでどう変わって行くのか。目が離せません。2017/12/22
skunk_c
26
第2次世界大戦以降のイギリス現代史を簡潔にまとめたもの。ほぼ10年ごとに章立てをして、その時代の特徴を浮き彫りにしながら、「大英帝国」、ヨーロッパとの関係、階級社会など、全体を貫く大きな流れを意識している。また音楽や映画、スポーツなどにも目配せが利いており、コンパクトながら平易で読みやすく、しかも十分な内容を持っていると思う。興味深かったのは近年の「イギリス病」への評価の変化や、日本と同様の格差社会の進行が見られることで、一方海外植民地の独立についてはもう少し書いて欲しかった。現代イギリス入門への適書。2017/10/10
coolflat
18
1947年の英国の金融危機は、海外との関わり方を大きく見直す結果へと繋がった。困難な状況下にあった労働党政権は、ギリシアとトルコへの金融支援を打ち切り、委任統治領という状態を改めパレスチナ問題を国連に丸投げ(翌年、イスラエル独立→第一次中東戦争へと発展)し、インドから手を引くことに同意した。この1947年という年は、英国から米国への覇権交代が明らかとなった年だった。米国は英国に代わり、ギリシアとトルコの支援(トルーマン・ドクトリン)を引き受け、マーシャル・プランによって欧州経済復興のための資金を提供した。2018/01/24
Haruka Fukuhara
18
今までに読んだイギリスの歴史の本の中で一番面白かった気がする。現代史とは何かから解きほぐすなかなかの意欲作。ツィギーかわいい。著者の専門は史学史とのことで、そんな学問があるのかと思ったけど、考えてみると思想史にも通ずるなかなか面白そうな分野という気もする2017/11/01