内容説明
新宿M銀行から一億八千万円を奪った強盗殺人犯を追って、涸沼刑事は南アルプス赤石岳へ分け入る。折からの暴風雨。湯治場・鹿沢荘には十数名の男女が避難していた。遭遇する刑事と犯人。極限状況に人間の本性が交錯する。長篇ハードロマン。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
HANA
75
嵐で倒壊寸前の山荘、閉じ込められた人々、そして外には狂犬病に罹患した狼が…。とまさにパニックホラーのお手本のような作品。ただ普通のそういった作品と違うのは、閉じ込められたのがヤクザに強盗犯、刑事といったどう転んでも協力しそうにない面々である事だろう。案の定話が進むにつれ各々のエゴが剥き出しになり、露わになる人間の本性。それが徐々に迫る山荘の倒壊というタイムリミットと相まって、まさに地獄絵図の様相を呈している。著者には極限状態で人間の本性が露わになる作品が多いが、本書は最高傑作に位置するのではなかろうか。2023/07/13
mihya
55
嵐の山荘、逃げる銀行強盗、追う刑事、ヤクザのお邪魔つき。…で想像した内容からは大きくかけ離れていた。衝撃的。最初、神の目線で語られるのに違和感があったが、これは神でなければ語れない。ポチーーーーー!!2023/10/20
金吾
24
○陰惨な話ですが、一気に引き込まれました。人間の描写がよく、過信やエゴ、弱さもよく理解できます。面白かったです。2023/10/28
GaGa
19
これは凄い!西村氏の作品はそんなに読んではいないが、最高傑作ではないだろうか。強盗事件で話が進行するのかと思いきや、まさかのパニック作品。タイトル通り、閉じ込められた山小屋に集う人々に襲い掛かる「魔の牙」。名作です。2010/07/13
村山トカレフ
5
暴風雨とせまり来る未曾有の台風によって崩壊の恐れのある南アルプスのとある山荘。その山荘にはオーナ夫婦の他に、銀行強盗、刑事、検事、暴力団、ワケあり老夫婦、陰のある三十路女性、新婚夫婦、老猟師と相棒のワンコ、女子大生グループが避難していた。敵は天候だけではなく、1世紀も前に絶滅した日本狼の群れ、しかも狂犬病に罹患のおまけつきの輩が虎視眈々と山荘の人間を狙う。最悪である。みなで力を合わせて脱出!やった!めでたし、めでたしなんて物語を寿行さんが書くわけなく……人間の業と性を赤裸々に表現する筆致はさすが。名作。2018/04/25