火定

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火定

  • 著者名:澤田瞳子
  • 価格 ¥1,699(本体¥1,545)
  • PHP研究所(2017/11発売)
  • ポイント 15pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784569836584

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内容説明

パンデミックによって浮かび上がる、人間の光と闇。これほどの絶望に、人は立ち向かえるのか。時は天平、若き官人である蜂田名代は、光明皇后の兄・藤原四子(武智麻呂、房前、宇合、麻呂)によって設立された施薬院の仕事に嫌気が差していた。ある日、同輩に連れられて出かけた新羅到来物の市で、房前の家令・猪名部諸男に出会う。施薬院への悪態をつき、医師への憎しみをあらわにする諸男に対して反感を持つ名代だったが、高熱に倒れた遣新羅使の男の面倒をみると連れ帰った行為に興味も抱く。そんな中、施薬院では、ひどい高熱が数日続いたあと、突如熱が下がるという不思議な病が次々と発生。医師である綱手は首をかしげるが、施薬院から早く逃げ出したい名代は気にも留めない。だが、それこそが都を阿鼻叫喚の事態へと陥らせた、“疫神”豌豆瘡(天然痘)の前兆だったのだ。病の蔓延を食い止めようとする医師たちと、偽りの神を祀り上げて混乱に乗じる者たち――。疫病の流行、政治・医療不信、偽神による詐欺……絶望的な状況で露わになる人間の「業」を圧倒的筆力で描き切った歴史長編。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

W-G

461
積んであった本。最近読んだ馳星周『四神の旗』と時系列が繋がることに気づき、読んでみた。藤原四兄弟は名前がちらっと登場するだけ。冒頭、宮城内で遣新羅使が倒れ、何かが始まりそうな不穏な空気を、読者にだけ抱かせるのは、映画的な演出で、上手く盛り上がっている。そこから、事実として特効薬がなかっただけに、どう発展させていくのか、気になり読み進めたが、結果感想は、退屈ではなくとも、予定調和の域を出なかったというところ。何か、突出した凄惨さや無常感があればもっと良かった。今読むのがタイムリーではあり、まずまず楽しめた。2020/07/30

starbro

424
第158回直木賞候補になってから図書館に予約したので、ようやく読めました。候補作4作目(4/5)です。澤田瞳子は、新作中心に読んでいる作家です。天平パンデミック歴史医療小説、読み応えはありましたが、サプライズが少なく地味な作品のため、受賞を逃したような気がします。著者は近い将来、直木賞を受賞すると思いますが、全会一致、素晴らしい作品での受賞を期待しています。2018/04/09

パトラッシュ

305
新型コロナに襲われている今日、日本最初のパンデミックである天平の疫病大流行を題材にした本作は興味深く読んだ。悲惨な死体の山や民衆暴動の描写などエンタメとしては面白く、天然痘と戦う医師や荒稼ぎをたくらむ悪党らの肖像もよく書けている。しかし、千三百年前の奈良時代を舞台にしながら登場人物は論理的に喋る無信仰の現代人ばかりに思えてしまう。この作者は強い文章力を持っているので読んでいるうちは迫力に流されるが、歴史小説でありながら当時の人や社会の考え方やあり方が感じられないのだ。取材不足や想像力の欠如ならば惜しいが。2021/03/11

nobby

260
もちろん奈良時代における天然痘による地獄絵図を見たことはあった。ただ、あくまで史実として習っただけの自分には、それを主題に描かれた人間ドラマは斬新かつ感動的だった。序盤は慣れない官職や人名の把握に戸惑ったが、早々に当時に引き込まれると分かりやすく繋がる様が心地よい。時代背景の真偽はともかく、新興宗教・外様への偏見・暴動へと陽動される様は生々しい。その“疫”に立ち向かう、ともに逝く、逃げ出す、利用する、自責に塞ぎ込むなど様々な葛藤が現代と重なるのがなかなか。読み終わり『火定』の意を噛みしめてなお余韻に浸る。2018/07/29

鉄之助

245
もっと、天然痘で相次いで没した貴族・藤原四兄弟(武智麻呂、房前、宇合、麻呂)の急死の謎が語られるか、と期待したが、がっかり。細かい登場人物のキャラクターについて行けず、消化不良に。2018/01/21

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