粉飾決算ｖｓ会計基準

著者名：細野祐二【著】

日経BP（2017/10発売）

• ISBN：9784822255381

内容説明

10年裁判の末、逆転無罪となった長銀・日債銀粉飾決算事件、著者が冤罪と見るライブドア事件、10年にわたる長期の粉飾決算事件であるオリンパス事件、現在進行中のウエスチングハウス買収後の東芝巨額粉飾決算――5大粉飾事件の深層を解明！

「想起すれば、21 世紀は粉飾決算とともにやって来た。本書で分析の対象となっている巨大粉飾決算事件はすべて20 世紀末から世紀を跨いで事件が発生し、21 世紀初頭の司法により決着が図られている。
21 世紀は時価会計の時代でもある。人類は、ベネチアのルカ・パチオリ以来、500 年間という長い年月をかけて、複式簿記による経済活動の測定及び報告の歴史を積み上げてきた。
この500 年に及ぶ企業会計は、一貫して投下資本の回収計算を目的とする取得主義会計により行われてきた。それが前世紀末頃から時価会計が出てくると、時価会計はあっという間に世界の会計制度を席巻してしまった。
(中略)
本書で分析の対象となっている粉飾決算事件は、時代が取得原価会計から時価会計に移行していく過程で事件化し、時価会計が主力となった時代に粉飾決算事件として決着している。
粉飾決算を引き起こした経営者は指弾されてしかるべきであるが、私は事件の背景に、時価会計が経営者の倫理観を毀損していった側面が見えてならなかった。時価会計導入以来すでに20 年近い年月が流れた。
人類史における時価会計導入の功罪が検討されるべき時期に来ている。私はVS シリーズ3 部作の完成版を書きたいと思うに至った。」（本書「はしがきに代えて」より）

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

[kawa]

オリンパスや東芝等、世間を騒がせた粉飾事件を、時々の会計基準等に絡めて詳説。専門的ではあるが、東芝事件の本質が初めて理解出来る等、エキサイテイングな内容。オリンパスも東芝も想像を絶するエグさ、日本の代表企業がここまでやるかとため息。内部告発や監査法人交代がなければ発覚しなかった可能性ありで、氷山の一角状態が連想されるのも二重にショック。「バイセル取引」等の利益調整はどこでもやっていると言う著者だが、上場企業が予想利益へ着地するための悪習を言っているのか？専門家がそれを言ってはダメでしょう、と凡夫は思う。

2018/02/11

[アルカリオン]

細野氏は会計専門家の名に恥じない解説をしてくれるので好きなのだが、本書はどういうわけか筆が滑っている。ライブドア事件の論評において、「刑法では『法の無知』は違法性阻却事由にならない」ことと対比する形で「『会計基準の無知』は『事実の錯誤』であるので違法性が阻却される」と主張している。これは残念ながら荒唐無稽な主張だ▼全体的には妥当な内容が多いが、専門知識のない読者を想定しているせいもあり、特に東芝事件については目新しい記載はなかった。

2021/05/05

[kenitirokikuti]

図書館にて。〈21世紀は時価会計の時代でもある。［…］複式簿記による［…］企業会計は、一貫して投下資本の回収計算を目的とする取得主義会計により行われてきた。それが前世紀末から時価会計が出てくると、時価会計はあっという間に世界の会計制度を席巻してしまった。〉▲〈日本では過去問題になった事例はないが、時価会計では金融負債が時価評価されるので［…］社債の格付けが落ちた企業は、負債の評価額が小さくなり、負債の評価益が計上される。業績が悪くなると利益が出てくるのである。〉

2021/04/11

[tashirecord]

他の企業の不正本に対して、会計に特化しているけど、会計の細かい知識無くても読めると思います。 本書の中に、東芝メモリの売却は２兆円でも足りないという分析も示されているところ、読了の前日の6/1に約2兆円で売却完了という報道があったばかり。

2018/06/02

[GOTI]

☆☆☆☆著者はキャッツ粉飾決算事件で虚偽記載有価証券提出罪で最高裁まで戦い、有罪となった元公認会計士。長銀、日債銀、ライブドア、オリンパスそして東芝五つの粉飾事件を専門家の視点から克明に分析している。前二者は最高裁で無罪となった。なぜ、他と比較しても実額、悪質性から問題とならないようなライブドア事件では堀江が実刑判決を受けたのか！オリンパス経営者の軽薄、東芝の闇の深さを記している。一番の問題は会計基準のブレ、変遷にある。WECの保証債務支払いから東芝は潰せない。村上世彰が東芝株を買い占めているらしい。

2018/03/22