内容説明
美貌の熾天使セラフィの任務は、地上に逃れた悪竜ジラフを捕らえ、天界の霊的秩序を脅かす危険を除去すること。一九三一年、シトロエン探険隊のゴビ砂漠横断。紀元前四八年、戦火のアレクサンドリア。そして一五九九年のロンドン──その追跡行は虚実の境界を超え『ハムレット』の世界を侵犯する。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
財布にジャック
61
はぁ、凄い物に手を出しちゃったことを、実はちょっと後悔し始めています。「日本ＳＦ屈指の傑作」と言ううたい文句につられて、つい出来心で読み始めたら、奥が深いのなんのって、入り込んだら出てこられない迷宮のような世界を旅してまいりました。ミステリーでもあり、歴史物でもあり、ファンタジーでもあり、その上耽美なんです。こんな偉大な本を100％楽しめなかったのは非常に悔しいので、もう一度「ハムレット」を理解した上で再読しなくてはと、固く心に誓いました。2014/08/19
藤月はな（灯れ松明の火）
36
煌びやかな情景で描かれる耽美で妖しいSFファンタジー。アフロディティによる黙示録を回避するために時空の歪みをもたらした竜、ジラフを探す熾天使、セフィロス。一方、ギルドのデンマーク導入を図るため、諜報活動に勤しむホレーショー。天界と『ハムレット』という一見、無関係の二者が絡み合った時の驚きと言ったら！特にホレーショーが男も女も惑わす魔性の男、ガートルードが男狂いとして描かれるなんて予想もしてなかったです。でも一番の被害者はクローディアス王とオフェーリア・・・・。個人的に「人間の行き着く先は」という論に燃える2015/01/30
傘緑
32
「ラファエル前派の顔立ちをした小さな天使」こんな言葉で始まる小説は、歴史的な傑作か、歴史的な駄作かのどちらかである。物語はF・イエイツ女史、テイヤール・ド・シャルダン、カエサル、ニザリ派山の長老、シェイクスピアなどの数多くの歴史を想像(創造)した夢想を経て、たった一場の夢物語へと収斂していく。また「ベーコンを人差指にまきつけて(久生十蘭)」「…地上の全存在が凍りついてしまうだろう(吉本隆明)」と、野阿梓という、一己の胡桃の中の妖異博物館、その収蔵品を鑑賞する愉しみも…「風と木のうたう詩」これは言わずもがな2016/11/20
Ｄ21 レム
28
水もしたたる超絶耽美SF。飛び抜けて美的な場面が多すぎて、何から書いたらいいのか！大型バイクに乗るこわい美天使と、おどおどしつつあやうい空気を放つ小天使、強く誇らかなアフロディテ、逃げるジラフ、あやういハムレット、危なすぎるガートルード、最終的に究極の方向に進み読者を「あっ」といわせるシェイクスピア。あれよあれよという間に、疾風に巻き込まれ、怒濤の驚きと美の激流に翻弄され…終わった。地上と天界と魔界と霊界と物語世界が絶妙のタイミングで交差。ひとつの世界の解釈。この本は、再読！2015/04/28
miroku
26
耽美的ファンタジー。 宝塚！？ シェイクスピア幻想譚とでも言うべき作品。2015/03/16
