内容説明
人間らしさを問う「杜子春」、梅毒に冒された15歳の南京の娼婦を描く「南京の基督」他、姉妹と従兄の三角関係を叙情とともに描く「秋」など、大正9年の作品計17編を収録。
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※本作品は電子書籍化にあたり、紙本に含まれていた次の要素を削除しております。
〈作品解説 三好 行雄〉
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
55
やはり芥川は面白いと思わされます。表題作などテンポが良くて読みやすいですね。ハマる作品が色々ありました。『南京の基督』とか出だしから心を掴まれます。2022/04/12
優希
50
改めて面白いと思わされます。『杜子春』の普通に生きる喜びには共感します。個人的に『南京の基督』も好きだなと。2023/03/20
万葉語り
38
杜子春は帯にあった「人間というものに愛想がつきたのです。」が印象的だった。17編の短編とエッセイで印象的だったのは「南京の基督」と「素戔嗚尊」様々なことに造詣の深い作家だと改めて思った。2017-1892017/12/06
mm
26
「日本近代文学の起源」を読んだ時、芥川と谷崎の間に起こった「『話』のない小説論争」の事が書いてあったので、芥川を読む。柄谷はこの論争で「話」が指しているものが両者で食い違っており、むしろこの論争は、中心性を持たないことへの立場の近さを示しているということなのだが。この芥川本のコンセプトはわかりやすくて、大正9年の3月から10月に書かれたものがほとんどである。大正8年に作家の危機として、同じようなものの繰り返しに陥った芥川が、転機を測って脱出を試みた時期らしい。クリアカットの文は不変のようだけど。2018/09/04
那由多
22
かつて菊池寛は「芥川の作品は銀のピンセツトで人生を弄んでゐるやうな、理智の冷たさがある……」と評していたが、ここに収められた作品群には既に当てはまらない。どれもそこそこ巧く他の作家なら合格点に達しても、芥川にしては平凡の域を出ていない。しかし『女』の蜂が蜘蛛に襲われるシーンなどのように、描写力はいずれも圧倒的。そしてページ数が短ければ短いほど、筆が冴える。2020/06/12