内容説明
人生をつつがなく平凡に暮らしたいなら本など読まないほうがいい。しかし、本を読んだほうが人生は格段に面白くなる――。人類未踏の地に分け入り、暗闇の中で氷雪を踏み歩く探検家にしてノンフィクション作家が、古今東西の書物を通して、「なぜ、探検するのか?」を切実に模索する。爆笑にして深遠な読書エッセイ。毎日出版文化賞書評賞受賞作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
hatayan
57
探検家の思想の血肉となった本を愛情とユーモアを込めて紹介する書評エッセイ。「死に近づくことで、生をリアルに感じる」。『空白の5マイル』以来繰り返し語られている角幡氏の哲学は本書でも健在。命を削るように作品を書き2001年に夭折したノンフィクション作家の井田真木子に紙幅が割かれていて親近感。氏が作家を志すきっかけとなった高野秀行『西南シルクロードは密林に消える』、SNSへの違和感を表現するような伊藤計劃『ハーモニー』、氏があまりの力量に悶絶したとする町田康の『告白』は読みたい本のリストに加わりました。2021/01/14
goro@80.7
56
座椅子の左右に積まれた本に囲まれてる身として、これは「危険な本」です。角幡氏の読書エッセイなのですが、氏の行動に直結してしまう本、多大な影響を受けた本が紹介されてるけど、探検家でノンフィクション作家の氏の読み方がのめり込んで自身の解釈がされてて、それにこちらも影響を受けそうです。「空へ」「西行花伝」「北極圏1万2千キロ」「告白」は積読山にあるので楽しみ!あと「狼の群れと暮らした男」「西南シルクロードは密林に消える」「世界最悪の旅」「ヤノマミ」「赦す人」は是非読みたい!あ、もちろん「極夜行」もね。2018/05/26
ホークス
52
書評とエッセイ。著者が登山に求める魅力は「無謀性、冒険性」。大衆化で登山は無謀性を失ったと嘆く。アル中は内臓が丈夫でないとなれない様に、冒険中毒の著者は危険や未知への耐性が強く、本書にも無謀なパワーがある(その分ツッコミ所満載)。テレビ畑の森達也はシーンの連続で書き、一瞬の表情などに真実を見いだすとの指摘に得心。高野秀行の「西南シルクロードは密林に消える」に強く影響された話から、二人の熱さと、高野氏が探検家である事がよく分かった。奥さんに「話し方がバカみたい」とダメ出しされる話は笑っちゃいけないけど爆笑。2018/09/30
Kajitt22
50
探検家の本に関するエッセイ。10年ほど前『空白の5マイル』を読み、ツアンポー川の圧倒的な水量・水流の描写に死の影を感じたのを思い出した。冒頭に植村直己ナナメリスペクトがあり安心して読めた。私ももう少し若ければ、モーム『月と六ペンス』のストリックランドの生きかたにより肯定的になれたかもしれない。読後、著者の危うさも感じたが、おかげで読むべき本が4.5冊見つかってしまった。本当に読書は出会いだ。2020/09/29
Book & Travel
50
角幡氏の著書は読んでいなかったが、何かのインタビューを目にして、探検家でありながら哲学的な人という印象があった。その角幡氏の読書エッセイということで、興味を惹かれ手に取った本書。期待に違わず面白かった。書評というより、彼がその本をどう読み、探検や人生にどう影響したか、またはどんな経験からどう読んだのかが主で、本と絡め探検への思いや様々な価値観が、自虐的なネタも交えつつ熱く深く語られる所に引き込まれた。同世代でもあり刺激を受ける言葉もあって、しまい込んだ思いを開けたくなるようなザワザワした読後感も残った。2020/08/11