内容説明
劉邦が前漢の初代皇帝となった四年後、新たに都となった長安の長楽宮に、小青胡と張釈という二人の幼い少年が宦官として仕えた。貧しい生まれの二人は宮殿での悲惨な生活のなか、強く惹かれ合う。しかし劉邦の死後、後継者争いが激化するなか、劉邦の息子・劉盈に仕える小青胡と、権力の虜となった張釈の関係は変化していく――注目の新人が描く、歴史小説の新境地。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
兎乃
30
新人作家とは思えない鍛え上げられた文章。歴史の切り取りがしっかりしていて、巻末の主要参考文献を見て納得。小説として完成度が高く、BLの括りに収まる作品ではない。帯「歴史小説の重みと濃密な少年愛を見事に両立させたこの力業よ!」命懸けで愛し合い、そして憎み合う。「好きなものは咒うか殺すか争うかしなければならないのよ。お前のミロクがダメなのもそのせいだし、お前のバケモノがすばらしいのもそのためなのよ。いつも天井に蛇を吊して、いま私を殺したように立派な仕事をして・・・」(坂口安吾:夜長姫と耳男)を思い出した。 2013/05/21
さら
19
中国の歴史文化に詳しくないので、わからないことが沢山。宦官に対してもどういうことかは知っていても、具体的にどんな役割なのか等、漠然としたことしか知らなかったことに気付かされました。人間の性の生々しさを感じ、嫌悪するところもありますが、主人公の小青胡のピュアさは張釈が負の部分を引き受けてこそなのかなぁと思ったり、読んでいてなかなかな複雑な思いをしました。時代(歴史)小説なのか、BLという分類なのか迷うくらい、よく出来ている物語だと思います。2013/05/14
孫研
18
BL的なギ ミックにばかり目がいきそうだが、この小説の最もユニークな点は『楽屋裏から歴史をのぞいた物語』というところにある。「戦や政でなく……細かい仕草にこそ、その方の魂の有り様は顕現すると思うのですが、いかがでしょう?」という小青胡の言葉通り、小さくか弱い少年宦官の視点から見る、劉邦、呂雉、張良、夏侯嬰などの英雄の姿は、既存の歴史小説で語られるものとはまるで違う。戦や政治など大きな物語が語られないからこそ、些細な仕草が浮 き彫りにされ、英傑たちの肉声やにおいが紙面から漂ってくるのだ。2013/03/22
nono
17
図書館本。紀元前の漢、劉邦が皇帝となった時代の小青胡と張釈という二人の少年が宦官として生き、歴史に翻弄されるお話。幼き日から宦官として生き抜く二人の生きる術は互いへの愛情だけ、それでも権力者達の思惑によって互いに望む物が食い違い、そして進む道は交わらない。あまりこの時代の事には詳しく無いけれど、有名な人達や逸話を思い出しながら流されるように生きた彼等の運命を思う。少年達の愛は描かれているものの、昨今のBLではなく寧ろJUNEの頃の作品を思わせる。重苦しい話でしたがこの時代を堪能しました。2018/01/21
のこ
15
読み終えたあと心臓がばくばくしていた。好きだから守りたいからという純粋な思いが歴史の渦と人々の思いの中で歪んでいく。歪んだことにすら気付かずひた思う張釈の姿と最期に泣きました。戚夫人の…あの描写には、「うっ」となりましたが…。表紙も本当に素敵です。2013/03/18