内容説明
イタリア・ルネサンス後期に活躍した自然探求者・技術者の著作。古代ローマの学者プリニウスの『博物誌』と並び称される。動植物の生成、磁石、女性美、蒸留、芳香、火薬、料理、狩猟、光学など、見聞と著者自身による実験観察をもとにした知識の万華鏡。黒魔術と言われる錬金術についても否定的に言及している。本書は博物誌としての歴史的意義とルネサンスから近代への思想的転換期を現している書物の抄訳。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
やんも
15
魔術といっても、魔法陣を描いたり、呪文を唱えたり、精霊や悪魔と交信する儀式を行なうようなものではない。自分も十分理解していないが、本書の原本が書かれた16世紀後半の科学知識では解明されていない、自然の力を神秘的なまま受け入れて、実践的に利用できる術が自然魔術、ということになるようだ。だからこの世界の成り立ちから始まって、生物、鉱物、天体、医術、美容、料理など多岐にわたる分野の知識が紹介されている。原本20巻の抄訳なので、説明不足の部分も多々あるが、当時の知識人の目から見た世界のありようの一端がわかる1冊。2017/06/21
春ドーナツ
9
16世紀末、ナポリにて出版。ポルタさんは白魔術師で自然魔術の研鑽を日々積んでおられた(ハリーポッターみたいに。というのは冗談で、日常生活向上のために)。彼の身辺では科学と哲学が密接に結びついていて、神羅万象に神が宿っている。まさに憧れの錬金術の世界です。「銀から金を抽出する方法」が具体的に、それこそハウツー本みたいな文章で書かれている。けれどもそこには神話的なバイアスがかかっていて、幻想物語を読んでいる感じがします。近代科学とは異なり、自然魔術は普遍的な法則や原理とは無縁だからかも知れません。でも魅力的。2017/09/12
ふるかねこがね
3
思想より科学に通じる部分がある。 植物に動物、鉱物。観察や資料に裏付けられた記述は、まるで理科の教科書のよう。 しかし、今では迷信とされる部分も多く、やはり昔の科学だなぁと。 これが書かれたのは16世紀なのだから、その意味では驚きだ。2017/08/21
○○○ ○○
3
磁石や光学についての近代的な知見と同時に、ダチュラ入りのワインでトリップする方法とか処女膜を復活させるとかのお得な情報が盛りだくさんで非常にためになる。「哲学者として振る舞うためにはまず裕福でなくてはならない」というパワーワードや最終巻が「何のジャンルだか分からないけど何かの実験」の寄せ集めなのもたまらない。「一定の法則が与えられるはずもない」自然に対する雑学的興味の中に「数学的知」への還元の第一歩が垣間見えたり、秘密主義と伝承することへの使命との葛藤があったり、訳者解説以上に近代科学に近いものを感じる2017/07/07
tban
1
白魔術士ならば ファンタジー世界で魔術を語るうえで これは持っていた方がよさそうです。 通読ははっきり言って相当に難しいですが どう自然を前に白魔術を考えていたかが よくわかります。事典として持つべき1冊。2017/05/16