内容説明
島田荘司選 第9回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞優秀作! その女は「毒」だ。身体を蝕み、心を壊す――。原因不明の奇病を患った兄は激痛に耐えかね、病院の窓から飛び降りて死んだ。兄の症状に納得がいかない妹の笹岡玲央は看護師から、義姉の真奈美が兄の腫れた足に巨大な蜘蛛を乗せていたと聞く。美しく聡明で献身的な義姉の「本当の顔」とは? 玲央の幼なじみの天才毒物研究者・利根川由紀が乗り出す!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
いつでも母さん
131
薬は毒、毒は薬。置き換えて・・母は毒、毒は母。そうなんだ 危ういよね。幼子に母は絶対だ!しかし子は母の所有物ではないのだ。そこに母の哀しみはある。この母は誰?玲央や真奈美の母には、これっぽっちも共感など出来はしない。けれど、母と娘って微妙だ。「さようなら、お母さん」悲しい言葉だ。2017/05/26
nobby
118
天才毒物研究者シリーズ第1弾。病院で飛び降り死んだ兄の“あんな物”と表された原因不明の症状はグローブほどに腫れ上がった歪な手のひら、響き渡る激痛の叫びはまるで獣の咆哮…不気味な冒頭に続き、美しく献身的な義姉に何やら毒蜘蛛とか島社会での自傷の過去など不審な事柄が次々と浮かび上がる。不思議なパーツが揃い踏み理系な展開を思わせた上で、精神科・虐待という分野に落とし込むのがなかなか面白い。「毒は薬、薬は毒」という相互の関係性を母親の愛情の表出模様に重ねる見解もお見事!子供が救われるラストにホッと出来る読み終わり。2018/08/13
茜
104
毒マニア利根川由紀シリーズの1作目。今で言うところの毒親がテーマと言ったらいいのかな。知らなかった代理ミュンヒハウゼン症候群と名付けられた行為と毒がどう絡んでいくのかが読んでいて興味深かった。代理ミュンヒハウゼン症候群を知った玲央の行動が無謀すぎて「焦りすぎっ!」と思ってしまった。そのままストーリー進むのかと思っていたらまさかのどんでん返しもあって面白かった。思えば今は毒親なんて言葉があるけど昔はそんな発想すら無かったなぁと考えてしまいました。 2021/10/25
モルク
88
手がグローブのように腫れ上がり激痛で獣のような咆哮をあげる。原因不明の奇病を患った兄は、その激痛に耐えかね病院の窓から飛び降りた。主人公玲央は、献身的に看病した義姉に疑いをもち彼女の故郷の孤島に、幼馴染みの毒物研究者由紀と訪れる。義姉の過去とは…。描かれている親子の関係が息詰まる、毒と代理ミュンヒハウゼン症候群と繋がっていき、そして題名はここかという展開を見せる。玲央の行動にイライラするが、続編もあるということなので、玲央とその母にも何か動きがあるかも…と読んで見ようかな。2018/12/26
Ikutan
83
第九回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞受賞作品。末梢に激しい腫れと痛みのある奇病に罹った兄が自殺した。義姉に不信感を抱いた玲央は天才毒物研究者の幼なじみ、利根川由紀と共に義姉の出身地の孤島に渡りその原因を探る。筆者の専門を活かした毒物や生物の知識が盛り沢山。興味深く読みました。由紀のキャラが魅力的ですね。ストーリーは奇病や周辺人物の謎解きからタイトルに繋がる毒母まで。薬は毒。毒は薬。確かにねー。母親と娘の関係も紙一重なのかも。面白かった。今後が楽しみな作家さんです。2017/07/08